創作
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生い茂るツルは繁栄の証、カラクサタウン。
トウヤを急かして着いたそこは、お母さんと来たこともある、高低差の激しい町。
高低差が激しいからこそ見晴らしがとてもよく、観光客で賑わうキレイな町だ。
「さ、まずはポケモンセンターにいきましょ!もしかしたらベルとチェレンもいるかもしれないし」
ずるずると引きずるようにポケモンセンターに入り、ジョーイさんにポケモンを預ける。
回復を待つ間、2階の休憩スペースに腰かけて待つことにした。
「…………」
さっきから何も言わないトウヤ。
いつものことだけど、何となくお喋りしたい気分だったから、トウヤの気分はさておき話し出す。
「ポケモンにニックネームつける?私はつけたけど、そういえばトウヤってつけてるの?」
「…………つけた」
「へえ、トウヤのミジュマルは何て名前?」
「笑うだろうから言わない」
何よそれ。
ため息が思わず出そうになる解答だが、バトルするときに結局バレると思う。
指摘すると、トウヤにとって盲点だったのか、面倒くさそうに考える、そぶりをした。
「バトルするときは“ミジュマル”って呼ぶ」
「それは、トウヤを普段、私たちが“トウヤ”って呼んでるのに、
他の人の前では“人間”って呼ぶのと同じじゃない?」
「…………はあ」
ため息をつかれた。
つきたいのはこっちだっての。
「マリン」
「へ?」
「ニックネーム」
単語だけで話すから、数秒間名前を言ったのだと気づかなかった。
しかしまあ、マリンとは。
「ずいぶん可愛いニックネームね」
「♀だったから。仕方ないだろ」
「へー、私のツタージャは♂だったわ」
興味無さげにふーん、とあいづちを打つ。
つれない兄だ……まあこの話題でテンション高くなられても若干退くけど。
「あ、回復終わったみたい。行こう?」
窓のそばのカウンターを立つと、トウヤは私の服の裾を引っ張った。
「わ、何」
「トウコは」
ぐん、と当然のようにつんのめりそうになるのをスニーカーでこらえて振り返る。
トウヤは私と目を合わせずに、外を見ていた―――さっきから慌ただしく、
ダサい銀色のコスチュームを来た人たちが人を集めている。
「トウコはツタージャにニックネーム、何て付けたの」
「え?……あ、うん」
まさか食いついてくるとは、しかもこのタイミングで。
珍しいものだと驚きつつも、別に隠すこともない。
「“ナイト”よ、チェスの騎士の、ナイト」
「…………」
黙られてしまった。
それなりにそれなりのニックネームを付けたつもりだったので、ちょっと残念だ。
「トウコらしいね」
またもや私を追い越して、追い越し様に言葉を吐く兄。
小さいけれど、兄に認められたのは久々で何となく、嬉しくて。
先ほどのように背中をふざけてどつくことも、できなかった。