創作

□目が合わない月曜日
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結局、学校に行ったはいいものの俺たちは秋和を見つけられなかった。


「あれ、鬼負(きふ)じゃないか?」

校庭の中心で立ち尽くし、空を見上げて動かない少女。

同じクラスの同級生の鬼負がそこにはいた。

黒色の肩よりも少し長いくらいの髪を二つに結っていて、日曜日だというのに制服姿だった。


「………鬼負、だよな?何してんだ?」

「ふわぶう!?」

軽いノリで尋ねる凪に鬼負はかなり驚いたようで、変な声を出した。

フランクな口調で男女共に友好関係が広い凪はクラスの女子にも軽く話し掛けられる。

俺には無理だ、絶対にそんなことしたら翌日から風当たりが強くなるだろうから。


「えーっと、白垣(しらがき)くんと野分(のわき)くんだよね?」

「………クラスメイトなんだから名前くらい覚えておいてほしいな」

さすがの凪の口調も心なしか3割増しで暗い。

まあ、2月にもなって名前を覚えられていないのは悲しいものがある。

ちなみに凪の苗字が“白垣”で、俺の苗字が“野分”。


「偶然だね、こんな所、休みの日にまで来る意味あるの?」

「「それは鬼負に言われたくないな」」

二人そろって言ってしまった。

ツッコミ所が多すぎる鬼負がいけないんだ。


「私はただ、風によって流れていく雲を見ていただけだよ。急に風、強くなったよね」

「あー、ソレ、梨夢も言ってたよな」

くるり、と後ろを向き鬼負に背を向け俺と目を合わせる凪。


「な?」

「……そうだな」

同意を求められても困る。

何て返せばいいのかなんて、よくわからずに肯定だけを示した。


「へえ、野分くんは鋭いねえ!これから大変だね!」

「大変って、何がだよ?」

はたして俺は鋭いのだろうか……にしても、“大変”になるのは嫌だ。

何しろ鬼負の言うことなので思わず聞き返してしまった。

鬼負のねな。

俺が言うのもなんだけど“のねな”なんて変な名前の彼女は、
本人は認めていないが、一部では“占い師”としての評価が高いのだ。

占い師、なんて大それたものでは無いらしいが。

だが言うこと言うことが予言者的、というか。

はっきり“こうなるだろう!”と鬼負本人が言い切るときもあるし。


「へへへえっ、詳しくは明日、みたいな?
 鬼負のねなは全てを明かすことなく去っていきましたとさ」

何てね、と笑いながら校門へと駆けていく鬼負。

自由人すぎる。質問に答えろよ。


「あっ、そうだっ」

あぜんとする俺達を尻目に走っていた鬼負が、叫ぶように呟いて急停止した。

そのまま俺達に振り返って。


「じゃあね!白垣くんの探し人は、きっと明日には見つかるよ!」

「えっ!?」

ちょっと待て、と叫ぶ凪を無視して『総ては明日から!』なんて言い残し走り去る鬼負。

後回しにしたような感じがイマイチあるものの、ここは
“占い師”もとい“予言者”を信じ、俺達は帰路についたのだった。


秋和が見つかった、という知らせを受けたのは、午前1時を半分以上過ぎた頃だった。
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