創作

□目が合わない月曜日
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『……悪いな、急に休むなんて言って』

「いや、俺も本当なら行くべきなんだろうけど」

『いーよ、梨夢は!ノートとっといて!』

月曜日、6時も30分を過ぎると、凪から学校を休むと連絡があった。

昨日見つかった秋和の、検査等があるらしい。

それに付き添うから休むらしいが、『幼馴染みなら当然』なのだろうか?

凪にはケータイがあるからか、俺の知らないこと(検査とか)を知っている。

凪は秋和が好きだから、そばにいたいだけなんだろうけど。

いつもは凪と行く通学路を、今日は一人で歩く。

今日は見事な悪天候、雨天だ。

走れば10分で着く距離にある中学は、高台の上にある。

港町だからゆえに、避難場所とされる学校が海にさらされるわけにはいかない。

だけれど毎日、高台へと続く坂道を歩くのはなかなか酷だった。

しんどい、部活やってた時は坂道ダッシュなんて平気だったのに。

受験だからといって怠けすぎたな……体力減ったかな、なんて思っているうちに着くから不思議だ。


「あっ、おはよー」

「ああ、鬼負か。おはよう」

髪を揺らしながら跳ねるように近づいてくる鬼負。

こいつのことはイマイチ分からない。


「ごめん、ちょっとどいて、私の靴箱ここ」

「っ、悪い」

ヒョイヒョイと靴を手際よく履く様子を尻目に階段へ向かおうとすると、
鬼負に呼び止められた。


「うわあ、野分くん!?待ってよ、重大なお知らせがあるんだから」

パタパタと足音をたてて駆けてくる鬼負の頭を見る。


「何の用だ、重大なお知らせは大抵重大じゃないだろ」

「うー……野分くん意外と辛辣だなあ。本当に重大なんだから!
 そうね、これからの人生を大きーく、変えるくらい」

そんなにも?

いぶかしく思いながらも話だけは聞いてやろう、と続きを促した。


「で?」

「今日ね、私達のクラスに転校生が来るんだよ!」

「へー、また何でこんな時期に」

中3の2月だぞ。

中途半端すぎるじゃないか。


「んー?そうかな。転校の理由は『祖父の願い事を叶えるため』だよ」

「何で知ってるんだよ……じいさんっ子ってやつか」

「ちょっと違うけどそんな感じかなあ。あ、そうだ、ちなみに席は教卓から見て
 右斜め端の最前列……野分くんの前、だね」

「ああ、あそこ前が机1つ分空いてるもんな」

元から人数が中途半端だから、数あわせの為に机が無いし。


「転校生への第一印象はよく!だよ?野分くん、校内の案内とか引き受けたら?」

誰がするか、そんなこと。

面倒くさいし、と告げると野分くんらしいね、なんて言われた。

……昨日まで名前曖昧だったくせに。


「転校生ね、女の子だよ」

呟いて、鬼負は教室のドアを勢いよく開けたかと思うと、自分の机に一直線に座った。

何がしたいのか意味の分からない鬼負の行動と、予言ともいえる発言を思い返し、
俺は鬼負の手のひらで踊らされているかのように錯覚してため息をついた。

まあそんなこと、無いとは思うのだけれども。
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