創作

□天真な火曜日
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昨日あれだけ降ったからか、今日は雲ひとつない晴天に恵まれた。

風も強いわけでもなく、春が近づいてきたことを感じさせる日和だ。

……まだ2月だけど。


「さみぃーなあっ、梨夢!」

あはは、と本当は寒いと思っていなさそうに言い、笑う凪。

昨日会ったときは秋和の検査結果を知らないままだったらしいが、
今朝メールで結果を教えてもらえたらしい。

いわく、これまでが嘘のように快調とのこと。


「『昨日のこと聞いたら返信くれないんだけど、どうしたらいいと思う』とか
 泣きそうな顔で言ってきた凪は一体どこの時空の狭間に消えていってしまったんだよ」

「時空の狭間!?俺ってそんなところに消え去ったの!?」

……いや、からかっただけだけど。

あんまりにも大袈裟なリアクションにあきれる。

驚きすぎてむしろ嘘っぽいなんて、悲しすぎる。


「で、返信まだなんだろ?」

「はっ、梨夢ってそういう、人の傷口をえぐってグリグリしてくるキャラだったんだな」

何だその痛そうな例えは。

そんなキャラ嫌すぎるし。

はあ、とまたわざとらしく、これ見よがしにため息をつかれた。


「来てねーよ、でも俺はポジティブシンキング凪だから、
 『病院にいるんだからケータイなんて使えるわけねーよな』と考えるぜ!」

「……そうか」

何だか可哀想な奴だった。

俺の幼馴染みってこんなにも可哀想な奴だったのか。

可哀想だということに免じて“ポジティブシンキング凪”にはノーコメント。


「でさあ梨夢、転校生なんだけど」

「積雲のことか?」

「そうそう、うーちゃん」

え、何で凪がそのあだ名を知ってるんだよ。

フッと軽く笑い余裕の表情で凪にケータイを見せつけられる。

……これだからケータイ持ってる奴は!!


「鬼負から聞いたのか」

「おうよ、イイコなんだってな」

「ん、まあ……そうなんじゃねえの?」

片仮名表記がむしろ怖い。

ナンパでもしに行く気か?

凪が秋和を好きだということが真実かどうか分からなくなってきたな……。

こいつどんだけその場のノリで生きてるんだよ。


「ま、青い春を楽しみたまえ野分くん」

「誰目線だよ、オイ凪!?」

たったったっ、と軽やかに坂を駆けていく凪を急いで追いかける。

こんな下らない会話だけど楽しくて。


やっぱり学校が嫌いなのに毎日飽きもせず通えているのは凪の力が大きいように感じた。
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