創作

□相見える金曜日
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「もういいよな!?起きろよ起きてくれよ6時だぞ!!」

「近所というか、俺の両親に騒音被害が及ぶから黙れ」

6時ぴったり、6時00分00秒になった瞬間に凪が部屋に入ってきた。

そういえば小5の時に幼馴染みだから、って母さんが凪と秋和に合鍵を
プレゼントしたんだよな……今更ながらに思うが、幼馴染みだからって
合鍵をあげていいものなのだろうか?

俺的には俺のプライバシーがないがしろにされている気がするから、今すぐ合鍵を取り返したい。

凪が合鍵を使ってまでやって来るのなんて初めてだよな、多分……なんて思いながらも
本日2回目の凪の話を聞く。


「秋和、俺のこと嫌いになったのかな!?」

「…………」

“恋する男子”って何かウザいな。

という冗談はおいといて……。


「そういえば」

昨日の積雲の話を思い出す。

現実味に欠けた、ファンタジーなお伽噺を。


ケンカのやり直しをするんだ、と言っていた。

天候を司る神と、風を司る神の3000年の時をかけた戦い。

……風の神は“神様”になったばかり。

秋和は先週の日曜に、凪に対して電話越しに『女神様になった』と言った。

これは単なる偶然か?

これはたまたま重なっただけのことなのか?

それにしては―――タイミングが良すぎる。

金曜日、3000年前にケンカをすると、約束した日。

秋和は一人、先に学校に行く?


「どうして、こんな」

秋和は“風の末裔”、風を司る神なのか?

どうしてこんなに、直前になって証拠ばかりが浮かび上がる。

1つの確信へと核心を付いてくる。

どうして、今なのか。

昔みたいには―――もう戻れないと?

俺達は高校に行ったら離れ離れで、これまでの関係は終わりだと。

終わらさざるをえないと。

そう、いうのか?


「……梨夢、おい、大丈夫か?」

昨日の積雲の話を知らない、知っていたとしても俺のようにさっさと
事柄を結び付けて結論を出さないであろう、凪は。

何か分かったのか?と心配そうに俺を見ながら、問いてくれる。


『鬼負によると最近神になったばかり、らしい。楽勝だな』

無表情ながらに余裕な口ぶりの積雲が思い出される。

―――何故、秋和は早朝から行く?

―――朝、戦うことになったから?


「凪、速く着替えてこい、俺らも速く学校に行こう」

「わ、分かった……!」

慌てて立ち上がり部屋を出ていく凪の後ろ姿を見ると、何となく
今は秋和と積雲のケンカを止めることを考えねば、と思った。


さあ、俺も速く着替えなければ。
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