創作
□なきむし の いいわけ
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「あ、れ?私……」
気分は大分楽にはなったが、気持ちが悪いことに変わりはない。
授業に戻らなくては、と急いで腕時計を見る。
時刻は、私が教室を出てからおよそ10分経過。
意識を瞬時に取り戻した自分の生命力に感動したが、
しかしできたら保健室のベットで意識を取り戻したかった。
廊下に無様に転がったままなど、意識を失っているうちに見つけてほしかった。
「多分、大丈夫」
よいしょ、とゆっくり時間をかけて立ち上がる。
視力の低下に伴い、授業中にだけ掛けている眼鏡は度が強すぎて辛い。
片手に眼鏡を持ち、階段を下る。
とてもじゃないが授業を受けられそうもないから。
しかし、保健室に行くなら行くで誰かに言わなくては……
職員室の前、面識のある先生をなんとか見つけようとするも、無理のようだ。
「どうかした?」
挙動不審な私の動きに、気付いた見知らぬ先生に、不意に声をかけられた。
このまま気持ちが悪いままでも授業を受けなければならないか、と諦めていたために心臓が数倍早くなる。
「気持ちが悪いの?」
「は、い……!」
「じゃあ保健室、行こうか。歩ける?何年何組?」
「あ、×年×組の、××です……」
見知らぬ親切な先生は、他の先生に伝えるから、と職員室にひっこんだ。
一人で行ける?
きっと今なら、気分もまだマシ、行けるはず。
のそのそ、スローで歩き出す。
保健室に行ったら、先生に何と言われるだろう。
母さんは仕事で4時まで帰ってこないし、迷惑掛けたくないなあ。
何でこんなことに、なったんだっけ。
「…………うぅ」
思わずこぼれた涙は、ぬぐってもぬぐっても止めどなく流れて、
泣く理由なんてないはずなのに、なかなか止まらなかった。
「どうして泣いてるの?」
保健室の先生は心底あきれたように、まずそう聞いてきた。
失礼します、と丁寧に入室したつもりだったし、泣いていることには触れないでほしかったが仕方ない。
そりゃ、気になるだろう。
誰も「自分のふがいなさに涙している」とは思わないだろうから。
「私は別に怒っていないし、怒られたわけじゃないでしょう?
泣いていちゃ分からないわ、小さな子でもあるまいし」
「うぐ………は、い」
言葉が突き刺さって、さらに涙がこぼれそうになる。
そんなことは分かってる、でも、何でか止まらなくて。
爪を手のひらに食い込ませて耐えても、全然意味なんて無いみたいに。
「情けなくて、泣けちゃって……すみません……」
「病気なんだから仕方ないのよ?そんな泣かないの。ね?」
厳しいと評判の保健室の先生だけど、とても優しく聞こえて。
下手に共感されたりするよりも心地いい。
「………………はい」
早退することになって、自分一人で帰らなくてはならなかったけれど、しっかり帰ることができた。
涙も不思議と、こぼれはしなかった。
なきむし の いいわけ
(病気すると心が弱くなる、らしいんだ)
ただの自分の腹痛+頭痛ネタでした。
ほとんど日記に近い……8割が事実だと……!
すみません。
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