創作
□駆け引きサジェスト!
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「今日は天気予報で雨が降る、って言ってたよ」
「そうなのか?あー、傘持ってねーや。
仕方ない、ダッシュで帰って傘取ってくるから、
秋和(あわ)帰りは、待っていてくれないか?」
「え、帰るんだったら私と帰らなくてもいいじゃん」
「は?俺は秋和と帰りたいんだよ!
それに、秋和が他の男に見られることが気にくわないし」
「ちょっ……恥ずかしいなあ。
別に走って帰らなくても、私の傘に凪(なぎ)も一緒に入ればいいじゃん」
以下、リア充が予想以上に爆発すべきリア充っぷりだったために略。
こんな会話が前方で繰り広げられているのだ、目だって死んでしまったかのようになるのは不可抗力。
前を歩くのは、俺や積雲(せきうん)と同じ高校に合格した幼馴染みの女子高生、岩見(いわみ)秋和と
同じく幼馴染みの他校の男子高生、白垣(しらがき)凪。
高校入学を境に、どちらからどう告白したかは定かではないが、いつの間にか付き合い出していた。
しかも学校違うのに登下校を共にしている。
何故だ、何故誰もツッコミを入れないのだ。
ひょっとして俺が言うのを待っているのだろうか。
あきれながらも下らないことを思ってしまっていると、今日は晴れだからか
ハイテンションな積雲が俺の背中を唐突にバシンと叩いた。
痛い、意外と力あるなこいつ……。
「そうなんだ!野分(のわき)くん、知ってた?
私、全然知らなかったよ!」
「いや、積雲が知らないのは問題があると思うんだが……」
「え?問題なんか無いよ!
私はただ、命ぜられた時にだけサイコロを振るだけ、なんだから」
「そういう問題なのか……?」
ちなみに俺は、今朝もきちんと天気予報をチェックしてきた。
降水確率80%。
じゃなかったら俺も、折り畳み傘なんて持ってこなかった。
「日陰(ひかげ)ちゃんは傘、持ってるかなあ。
……野分くん、ってことで帰りはよろしくね!」
「は?何が」
「だ・か・ら!帰りはキミの傘に入れてね、ってことだよ!」
クラスメイトの心配をしたかと思えば、いきなりそんなことを言い出す。
ちょっと待て、それは本気か?
「じゃっ!私、サイコロ振ってから追いかけるから、先に行ってて!」
「積雲!?」
話を聞いていなかったろう前の2人は、のんきに「気を付けてね、うーちゃん」だの
「またな積雲」だの言っている。
……どうしたら、いいのだろうか。
雨の積雲、ということは恥ずかしがり屋。
アイツと俺が、帰りは相合い傘?
頬が熱い。
まんざらでもないだなんて、それこそ何かの冗談であって、ほしかった。