創作

□駆け引きサジェスト!
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朧月の弁当は豪華でしかも量が多いので、今日も今日とておかずをいただきながら。

相合い傘を積雲に申請されたことを話すと、朧月は大して驚いた風もなく答える。


「すればいいじゃん。何を悩むことがあるの?」

「いや、まあ……そうなのかも知れないが、やっぱり躊躇するだろ」

例のごとく、高校でも積雲は多重人格者の設定である。

考えてみれば無理があるが、それ以外に誤魔化せる方法もないので黙っておく。


「躊躇する必要もないよ。
 彼氏彼女でもないのに、現代社会において相合い傘ができることをもっと喜ぶべきだよ。
 喜びの舞いでも披露してほしいくらいだ」

「俺の心身が共に疲労する!」

「恥ずかしがらなくてもいいのに……
 そんなに嫌なら、わたしが傘1本くらい貸してあげようか?」

「え」

傘、2本も持ってるのか?

耳を疑うが、朧月は何てないことかのように笑った。


「普通の傘を持ってきたからね。それに、置き傘に折り畳みがあるし。
 わたしなら凩(こがらし)さんに頼むこともできるし」

「凩さんに頼りすぎだろ……お前……」

凩さんは、朧月の遠縁にあたる人、らしい。

結構へビーな半生を送ってきた朧月の保護者兼、お手伝いさんみたいな人。

豪華な弁当を毎日、朧月のために作るのはこの人らしい。

会ったことはないけれど、話を聞く限り相当、朧月を溺愛している人である。


「いーんだよ、凩さんはわたしに依存してるし、自分の意思で私の言うことを聞いてくれるし」

「だからそれを利用するなよ……」

考え方が悪役チックだ。

さすがは過去に世界征服を企んでいた奴の思考である。


「ま、とにかく。早く結論を出しなよね。もう午後の授業が始まるよ」

「そうだな……ありがとな、話聞いてくれて」

「これくらいならお安いご用だよ。また弁当食べてよね」

軽く返してくれる朧月。

今ごろ凪や積雲や秋和は、何をしているだろうか。

何となく不意に、疑問に思った。
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