episode 1

□衝突
1ページ/5ページ

「出るぅ?」


ニビを出てから2週間。おつきみやまを超えハナダジムのジム戦を済まし、シオンタウンに向かっていたところ、突然の雨に見舞われ、とある老人の家に厄介になっていた。


「この町は…昔からしんだポケモンの霊が集まる場所と言われている。」


言いながら、その老人…フジ老人は、お茶を持ってきてくれた。


「そんなポケモンの霊を慰めるために建てられたのが…ホレ、あのポケモンタワーじゃ。」


チラ、と外へ視線を投げるフジ老人の後を追えば、確かに古い塔が見えた。


「…つまり、あの塔、ポケモンの墓なんですか?」

「そうじゃ。」


割とあっさり答えられた。


「…あ、言い忘れてましたね。俺はライトと言います。」

「おぉ、よろしく。」

「…で、話戻しますけど。」


ズズ、ともらったお茶をすすりながら、ライトは話を進める。


「さっき、フジ老人の家の外にポケモンの墓がありましたよね。なんであそこに墓を立てないんです?」

「…ライト君といったかの。」

「えぇ」


今度はフジ老人が茶をすすった。


「…わしだけじゃあない。もう誰もあのタワーに近づこうとする者はおらん。」

「…あぁ、なるほど。『出る』ってわけですか。」


ライトは少し鼻で笑いながら言ったが、フジ老人のしょげぶりを見て気を取り直す。


「まぁ…信じるか信じないかは君の自由だがね。」


ふと、フジ老人の手元を見れば、写真があった。


「…それ、死んじゃったポケモンの…?」

「そうじゃよ。…できれば、あんなところではなく、きちんとしたお墓で眠らせてやりたいものじゃが…」


ズイ、と写真をこちらに寄越したので、ライトもそれを見る。写真は一枚や二枚ではなかった。カサ、と何枚目かの写真をめくると、


「っ、グリーン!?」


まさかの人物を発見した。


「その子を…知っとるのかね!?」

「え、あ、まぁ…ライバル…みたいな。」

「そうか…。この子はドードーが死ぬ直前、この町にやってきてのう。」

「へぇ…で、グリーンはどこへ?」


何の気もなく聞いたつもりだったが、フジ老人は困ったように首をかしげた。


「…あのタワーを調べてくると言ってもう2週間も帰ってこん。」


(…タワーの状況を知っときながら、止めなかったのか…?)


フジ老人の言葉に少し怒りを覚えたが、あくまでも冷静に。


「お茶、ごちそうさまでした。」

「おや、まだ雨が降ってるよ。」

「いえ。俺ももう行くので。」


そう言って、ライトはフジ老人の家を出た。

グリーンのポケモントレーナーとしての実力は本物。そう簡単にやられるやつじゃない。
…目の前にそびえたつポケモンタワー。


「…暴いてやろうじゃねーか。ユーレイの正体をよ!」
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ