episode 1
□過去
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「何…?」
今、この少年はなんと言った?
「…なんだよ、よく聞こえなかったか?2回目だっつってんだ。」
「…。」
ナツメは急に訳のわからない事を言い出したライトに視線だけを送る。
「…7年前。エヴァンス家っつーカントー1の名家を襲ったの、お前らだろ?」
「…7年前…?」
ライトの言葉に、ナツメはふと思った。
…そうだ。確か自分がロケット団に幹部になってすぐ、グレンタウンのはずれにあったエヴァンスという名家を襲撃した。
あの時は確か…そう。家ごと燃やしたのだ。
だから、エヴァンス家はそこで歴史を終えた。
「…なぜそれを…?」
そう言ったが、ナツメはすぐにハッとした。
あの時、部下からの報告で死体が足りないと言われたのだ。
エヴァンス家は当主とその妻、そして跡取り候補である子供達が、男児が2人、女児が1人がおり、計5人。
だが、焼け跡から出てきた焼死体は、大人のものが2つと子供のものが2つの計4つ。体格から考えて、見つからなかったのは子供の誰か。
「…あなた、まさか…?」
「…あぁ、そうだぜ。あんたが察している通りだ、ナツメのねーさん。」
ライトはニヤリと口角を上げた。
「俺の名前はライト。ライト•エヴァンス。」
「…! あはは!折角生き残れたのに、また来るなんてね!」
だが、ナツメは変わらず高笑いを続けた。
「でも私は知ってるわ!エヴァンス家の跡取り候補は男児を差し置いて女児だった!力のない貴方にできる事なんて何もないわ!」
「ハッ…」
その言葉を聞いて、ライトは思わず笑った。
「その発言からして、どうしてサカキがエヴァンス家を襲ったのかは知ってるらしいな。」
…エヴァンス家は莫大な財産があった。名家が襲われる理由なんて大抵は金目当て。
だが、ロケット団はエヴァンス家を、焼いた。金もろともだ。
…その理由は至って簡単。
「…えぇ、知ってるわ。サカキ様は邪魔だったのよ。エヴァンス家の"力"が。」
ナツメの言葉は、何故かとても響き渡った。