AnOther

□プロローグ
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「…お帰りなさいませ、ご主人様。」


そう言って、ゆっくりと頭を下げる。


「ただいま、鈴ちゃん。」

ここは喫茶店「メイド・ラテ」。
永遠の18歳(自称)である兵藤皐生という店長が経営しているメイドカフェだ。

「ご注文をお伺い致します。」
「じゃあ、萌え萌えオムライスで。」
「かしこまりました、ご主人様。」

鈴…もとい三日月桜鈴は、高校入学当時からこの店で働いている。

「新規オーダー、萌え萌えオムライスです。」
「あ、鈴ちゃん、もう上がっていいわよ〜。」
「…分かりました。お疲れ様です。」

店長のさつきは大変人柄が良く、悪く言えば騙されやすい性格だと思うが、人の上に立つ人間としては非常に良くできていると感じる。

「帰りがけでいいから、ゴミ出しお願いできるかしら?」
「了解です。お先に失礼します。」

ぺこりと頭を下げると、桜鈴はさっさと更衣室に引っ込み、数分で帰り支度を済ませた。

「(今日は…生ゴミ、か。)」

キッチンのゴミ箱を開けるとそこそこ膨れたゴミ袋。破れないようにそっと引っ張り出すと手早く口を結び、荷物を持っていない方の手でひっ掴む。


足早に店の裏口を開けた、その時だった。


「あれ、会長?」
「!」

金髪に翡翠の目。
スラッとした長身のこいつは…


「…碓氷、拓海…?」
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