AnOther

□第1話
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星華高校。
共学になってまだ数年、元男子校だったこの高校の生徒はまだ8割が男子。

そんな中、成り行きで私が初代女生徒会長となってしまってから早1ヶ月。

入学当初からお世辞にも綺麗とは言えなかった校舎、男子校の名残かほぼ全裸で廊下を行き来する男子たち、魔界の匂いのするロッカー、山積するエロ本。

些か堂々すぎる男子たちを前に、力のない女性陣はただ耐えるのみ。そんな生活が続いていく…はずだったのだけど。


「お願い三日月さん、星華を変えて!」


数少ない女教師の(勝手な)推薦により運悪く白羽の矢が立ってしまった私こと三日月桜鈴は、見事生徒会長という立場を手にしてしまった。

それもそのはず、生徒会などと言うものには興味のない学生ばかり。選挙なんてあってないようなものだった。


「…校内清掃、サボった人にはトイレ掃除1週間だよ。忘れたの?」
「! 会長、いつの間にいたんだ?!」
「三日月さん…!」


帰り支度をしている女子に掃除当番を代わってくれとせがむ男子の背後にそっと立ち、箒を手渡す。


「教室内のほぼ全裸男子組。次にそう言う格好したら許さないって言ったよね。」
「「「「「!!!!!」」」」」

ポキ、と軽く指の骨を鳴らすと、男子たちは慌てて制服を着始めた。


「………。」


別に暴力が好きなわけではない。
入学当初、少し空手部の人たちと悶着を起こして以来、なぜだか男子たちに恐れられている。


「…(誰か、泣いてる……?)」


廊下を進んでいくと、微かに聞こえる泣き声。
特に早足になることもなかったが、現場に向かった。


「…何してるの。」
「別に。告白断ってるだけだよ。」
「またお前か…碓氷拓海。」


金髪に碧眼、身長186cm。
頭脳明晰、運動神経抜群。星華では学力も右に出るものはいない学校1の所謂モテ男。


「別に人の恋路なんてどうでもいいんだけど、泣かすのはやめてやってくれる?」


乱雑にそう言い残すと、私は帰りの荷物を纏めに生徒会室へと向かった。



「…(何回目だっけ、あのセリフ。)」
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