Bouquet Of A Lily bell
□VS怪盗キッド U
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「!」
流石に予想外だったのか、目を見開きながら後ろに引いたキッドだったが、ハットとモノクルに隠されていた顔がよく見えた。
「…声色から分かってたけど、結構若いのね。高校生?」
「攻撃の後のセリフがそれですか…なかなか刺激的なお嬢さんだ。」
「貴方が人を傷つけないのは知ってる。こいつに銃を向けたのも見掛け倒しだって分かってたから。」
「それはそれは。」
蹴られた手をお化けのようにひらひら振りつつもポーカーフェイスを崩さない。
よっこいしょ、と使い物にならないモンドに肩を貸しながら起こしてみると、かなりの重量だ。筋弛緩剤というのは本当らしい。
「おーい、武器化、できる?」
返事がない。まるで屍のようだ。
武器化もできなくなるとは。背負って帰るの大変だこれは。と思いつつポイとモンドを地面に返すと、私は改めて怪盗に目を向けた。
「…どうする?私の連れが回復するまで貴方と遊んであげてもいいけど。」
「…そこは状況的に私の方が有利なはずなんですがね…。貴女は私が思っていたよりもずっと強気なようだ。」
そう言いつつ私に払い落されたトランプ銃を拾い直した時は一瞬ギョッとしたが、彼はそれを素直にスーツの中に仕舞い込む。
「今回は手を引きましょう。貴女がこのまま雨に打たれて身体が冷え切ってしまってもいけない。」
そう言いながら私の目前に差し出された手からは、ポンと鈴蘭があらわれ、思わず目を点にする。
「?」
「これは貴方に。またお会いしましょう。」
「できればもう会いたくない。」
私の声はギリギリ聞こえなかっただろう。
白煙に包まれながら姿を消した怪盗の気配は早くも遠くに行っていた。