Bouquet Of A Lily bell
□向日葵防衛戦
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「いいのか?捕まえなくて。」
「今回だけは見逃してやる。」
「ふっ…アンタは俺を捕まえられるようなタマじゃないだろ。」
そうだもっと言ってやれ。
その銃使うしか能がないアメリカン警察は(少なからず消してはいるけど)私の気配にも、すぐ近くで動いたキッドの手下にも全く気づかないような奴だ。
「アンタのこと勘違いしてたぜ、チャーリー警部。」
「お互い様だ。」
警部が振り返った時にはその姿はない。といっても彼は手近な木に登っただけ。完全に警部の気配が消えてから、キッドは私を起こしに戻ってきた。
「怪盗紳士も大変ね。」
「きっとお嬢さん程ではありません。」
「…貴方の仕事にとやかく言うつもりはないけど、その綺麗な魂、汚さないようにね。」
「…?」
初めて怪盗キッドを見た時から。魂を見た時から。悪い人間ではないとわかった。悪事を働く大悪党と聞いていたからどんなもんかと面白半分で見たことを後悔した程だ。
「もしも、貴方の魂が私たちの管轄に堕ちてしまったら、その魂を貰わなければならなくなるから。」
魂、なんて非科学的な発言にキョトンとする顔も、まだ私と同じぐらいの幼さが残っている。
「じゃあ。もう会いたくないからね。怪盗キッド。」
キッドに差し伸べられた手を素直に掴んで体制を起こすと、そのまま彼に背を向けた。くす、と少しだけ笑ったような気配を残して、彼も静かに姿消していくのがわかる。
「なんて事もあったな〜。」
「は?」
「なんでもな〜い。」
ガラガラとトランクを転がし空港を歩く私達の前に、なんだか顔立ちの似た高校生と小学生が目に入り、思わず笑みがこぼれた。