華嵐
□無口な彼へ
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「なんていうか昔はほら、いろいろあったわよね」
私は仕事中のグリーンを差し置いて、開口一番に言う。
「…どうしたんだ、いきなり。」
グリーンはこちらを振り向きもしない。
「……。」
ちょっとむっとしたけど、そのまま話を続ける。
「昔は…」
そういってブルーは一人で回想シーンに入りながら、
「グリーンと一番最初に会ったのはヤマブキの上空だったわねw」
「あのときのグリーンとレッドったら…」
「その後のポケモンリーグなんかも…」
いいたいことがありすぎてまとまらない。
「…まったく。うるさい女だ。」
いつものごとく放たれた言葉。
「…でも、これでみんなが変わって行ったのよ。」
ブルーは視線をどことなく投げる。
ようやく振り返ったグリーン。
「…?」
そのわずかな変化を、グリーンは見落とさなかった。
「レッドはセキエイリーグで優勝して、チャンピオンになっちゃって、あなたはあなたでトキワのジムリーダーじゃない。」
「おい、ブルー?」
「私はなにも……」
いつの間にか、ブルーの目には、何かが溜まっていた。
ブルーはあわててグリーンに背を向ける。
「…アハハ、何言ってるのかしらね、私ったら、ホホ。」
決して表情を見られないように。
「まあ二人とも、優秀な私と同じ図鑑所有者なんだから当たり前よね!」
「…。」
グリーンは、そっと席を立った。
「あたしだってこれから…これ、から…」
「ブルー。」
「ッ!」
あまりに無意識に自己の世界に入っていたためか、
グリーンが近づいていたことに気づいていなかった。
「な、なにかしらグリーン?」
それでも決して表情を見られないように、さらに距離を置きに行く。
「ブルー!」
だが、それはできなかった。
グリーンがやや強めの口調でブルーの手首を掴んだ。
「無理するな。」
普段無口な彼が、いつの間にか私の名前を何度か呼んでいて、
珍しく私にかけた言葉。
「ホ…ホ、何のことかしら、グリーン?」
私はわざと話をそらそうとした。
自分から話したのにね、
と心の中で思う。