華嵐

□立ち尽くして
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この白いやつは、なんていうんだっけ。


あぁ、
"雪"だ。

茶色いのは岩と土。
でも、雪に隠れてあんまり見えないな。


ふと、そんなようなくだらない事を、何度考えただろう。


"ここ"に立ってから、
もうどれぐらいたったっけ。


分からない。


ただ必死に強さを求めた。


沢山出会った。
沢山別れた。
沢山戦った。





戦って戦って戦って、
戦って戦って戦って。









でも、
一度も負けなかった。




ただの、一度も。




街々の強さの象徴…判定者である彼らは、僕に負けて何を思ったのかな。




いつから、
僕は1人になったのかな。




それは分かるよ。




僕が、
"ここ"に立ってから。




無邪気に街々を歩いてた。
それはもう過去。




組織を一つ潰した。
それももう過去。




僕が"ここ"に立つ意味?


それも分かる。




待っているから。





同じ過去を持つ、彼を。





タイミングよく、
サク…と、新雪を踏む音が聞こえた。もちろん、僕じゃない。




「…」


僕は、ゆっくりと洞窟の方に振り返る。


「わ…山頂は更にすごい雪だな…」




赤い帽子に、半袖の上着。




この雪山にそんな格好で来るなんて余程馬鹿なんだね。




開口1番にそう言ってやろうかと思ったけど…




僕も"同じ"だね。



「!」




やって来た彼は、
僕に気付いたみたい。





「…初めまして。」




少し、間を置いたのはどうして?




「俺はカントーのマサラタウンから来ました。名前は、」




僕は、ずっと肩に乗せてたピカチュウに目で指示を出す。




「「レッド。」」




ポツリと言ったぼくの名前と彼の声が重なった。





「…君が、ここに来た理由は、分かってる。」




僕は帽子の鍔をくい、と下に下げる。


「まずは、名乗るのが、ルール。」




「…説明は、いらないって事ね。」




彼はニヤリと笑って、ボールを手にとった。






「さあ、始めよう。」
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