華嵐
□疲れた時には○○○人を
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「ウィンディ、しんそく!」
「ピジョット、エアスラッシュ!」
「フーディン、かわしてサイコキネシス!」
…カントー地方、トキワシティ、トキワジム。
「カブトプス戦闘不能!よって、勝者、ジムリーダー、グリーン!」
「ふう…。」
最後に使ったフーディンをボールに戻しながら、俺は溜息をついた。
「…、手応えがなさすぎる。」
最近、トキワを含めたカントーのジムへの挑戦が増えた。理由は簡単。
もうすぐ、セキエイリーグが開催されるからだ。地方のバッジを8つ集めたトレーナーが無条件で出場できるというルールが追加されてからというもの、リーグが行われる年になると、この時期はいつも忙しい。
だというのに。
「はあーい!グリーン、元気?」
来てはいけない奴が来た。
「お前な…来るなら裏口から来いといつも言ってるだろう。」
ジムトレーナー達が凄まじい勢いで全員負けたというから急いで来たというのに。
「ホホ、だってアタシは最近バトルしてなかったから、調子合わせにぴったりだったんだもん。」
来てみればこれだ。
「…ブルー、お前が強いのは知ってる。だから頼むからうちのジムトレ達を苛めてやるな。」
ブルーの手には一つのボール。
辺りに水が飛び散っているから、おそらく彼女はカメックスで闘ったのだろう。
…いや、逆に言えば、
彼女はカメックスだけでジムトレ達に勝ったのだろう。
「…流石だな。」
「え?」
ボソッとグリーンが言った言葉。
聞こえてはいなかったのだろうが、彼女は驚く位耳が良い。
…危なかった。
ふとそんな事を思いながら、
グリーンはジムトレ達を部屋の奥に下がらせ、本題に入った。
「で、何の用だ。」
「あら、折角分かりやすいように正面から来てあげたのに。」
「…何が言いたい。」
「だから、普通に考えれば分かるでしょ?」
普通に考えれば、というのはあれか。ここはトキワジムで、ブルー…つまり、ポケモントレーナーが正面からやってきた。これが示す意味。それは。
「お前…まさか挑戦に来たのか?」
「ホホ、あたり♡」
「…。」
なぜこの忙しい時期に。
「ブルー…、生憎だが今この時期にお前に構ってやれる暇はない。挑戦ならまたいつかーーー」
「手応え、なかったんでしょ?」
「!」
いきなり、ブルーに言われた事が核心に触れすぎていてびっくりした。
「トキワのジムリーダーって、そこらへんのトレーナーじゃ相手にならないって噂を聞いたから、思わず来ちゃった。」
…確かにそうだ。先程も言ったが、挑戦者こそ来るものの、手応えがなさ過ぎて本気になんてなれやしない。
その不満がいつしかストレスになり始めていた、…気がする。
「今回の相手は簡単には倒せないわよ?」
にや、とブルーは笑いながら新たなボールを掴む。
「…気が変わった。いいだろう、挑戦を認める。」
俺の中で渦巻く、
強者と勝負出来る嬉しさと、緊張感。
「手加減、しないぞ。」
「望むところよ!」
…ブルー、
お前にはいつも助けられてばかりだな。
今回も、
よろしく頼む。