華嵐
□心の空洞
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触った物を、全て凍らせてしまうこの能力が死ぬほど憎かった。
愛しい人に触れることさえ許されないこの現状を呪った。
こんな能力を手にした自分を心底呪った。
高位能力者の証である位付けも要らない。欲しくない。必要ない。
ただ私が欲しかったのは、あなたの。
「好きだ」
の。たった一言。
「もう…届かないね。」
呟く程度だったはずの声は驚くほど周りの空気を振動させた。
なぜ届かないのだろう。
こんなに好きなのに。
互いを知らなすぎたのか。
干渉しなかったからか。
それとも、干渉しすぎたのだろうか。
届けたいのに、もう………
届かない。
氷の中で眠るあなたを見ながら、私は刃物を握ったままの左手を振り上げた。
さよならを、言う時間だね。