episode 1
□過去
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…ライトは静かに言った。
「…ユンゲラー、攻撃をやめろ。」
…一言だ。
その一言で、ライトの体が、自由を取り戻した。
「なッ…!?」
突然の出来事にナツメは思わずユンゲラーを睨みつけたが、当のユンゲラーは目の焦点が合っていないかのようにボーっとしている。
「…ナツメ、お前はさっき言ったよな。エヴァンス家の跡取りは、男児2人を差し置いて女児だったって。…その通りだ。」
言いながら、ライトは先ほど落としたボールを拾い上げ、スイッチを押した。
「表には公表されてなかったこの力。なのにサカキはよく調べてたよ。父様が使っていた力を。」
うっすらと、笑いながら。
「…跡取りは1人の女児。」
まるで、歌うかのように。
「サカキは見落としてたんだ。」
追い打ちをかけて。
「唯一発見できなかった子供の死体が、女児のものだって事をな。」
そうライトが言った瞬間、先ほどのボールから出てきていたウィンディが、何の指示もなくユンゲラーを打ちのめす。
「ッ…!貴様…!」
「…なぜ男児を差し置いて女児が跡取りになったか、教えてやろうか。」
ウィンディはライトのもとに帰ってくると、ナツメを威嚇するように低く唸った。
「それは、エヴァンス家の正統な後継者は、代々、“統べる”力を持って生まれてくるからだよ。」
唸るウィンディをなだめるように、ライトはウィンディの頭を優しくなでた。
「サカキはこの力を利用しようとした。が、あえなく失敗。邪魔になったから、襲撃した。」
だが、その目は明らかに穏やかではない。
「…残念だったな、一番大事な奴をやれてなくて。」