神と化け物と神童と。

□☆ルームメイト☆
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あれから教室に鞄を取りに行った僕等は一旦そこで別れた。
日向くんは直ぐに寮に向かったが、僕は右肩の怪我があった為先に保健室に向かったのだ。
ーーまぁ、自分でもこの怪我なら直ぐに“治せる”けど、肝心の包帯を持ってくるの忘れたからな…。

カツッ。
琥珀は先生や生徒が行き交う廊下を、迷いもなく進んだ。
まるでその道を知っているかのように。



それから琥珀は、保健室で包帯を受け取ると直ぐに寮へ向かった。
これから一年間世話になるであろう部屋を整理し、先程怪我した肩の傷口を“文字の力”で癒す。
琥珀「ん。」
ある程度傷が塞がると、琥珀は先程もらった包帯を肩に巻いた。
少し痛みはするが、先程までの疼くような痛みはない。

琥珀は一通り支度を終わらせると、急いで食堂に向かった。


琥珀「お腹すいた…」
ぼそりと呟きながらお腹をさする。
ーーというか…。
同室の人、部屋にいなかったなぁ。
先に来たって訳でもなさそうだったし。…まさか…もう“始”に喰われてたとかそんな事ないよね…?
だったらヤダな…。
…はぁ。
ルームメイト…どんな人なんだろう…。いい人だと良いな。

琥珀は、まだ見ぬルームメイトに少し思いを馳せるのであった。


=食堂=
暫くして食堂につくと、琥珀は中を見回して感激した。
ーーお、美味しそう…!

食堂の入り口近くにトレイと皿が置かれており、多くの食べ物がずらりと並べられている所を見ると…どうやらバイキング形式らしい。
琥珀は直ぐにトレイに皿を載せ、サラダなどの食べ物を盛っていく。
琥珀「これとこれ入れて…後はこんなもんかな。あ、飲み物も用意しなきゃ。」
ブツブツと独り言を呟きながら、最後に飲み物として緑茶をコップに注ぐと、琥珀は空いてる席を探しに行った。
ーーどっか空いてるとこ…。
食堂内を一通り見渡してみる。
ーーん?アレって…。
すると、少し奥の席の方で見知った三人の姿を見つけた。
琥珀は小走りでそこに向かう。

琥珀「どーも!」
そして琥珀が陽気に話しかけると、三人は少し驚いたような顔をして…其の後に内二名はホッと安心したような表情を見せた。
「琥珀!」
「無事だったんだね!!」
勿論ホッとしたような表情をしたのは、黄葉とアイラだ。僕はそんな彼等に笑顔で返す。
琥珀「なんとか。…あ、日向くん。隣座りますね。」
承諾も無しに日向くんの隣に座る。
だが日向くんは対して嫌そうな顔はしていなかった。日向くんは「おう」と短く返事をする。
僕はそんな彼に少し安心すると、3人と同じようにお茶を一口啜った。

黄葉「…あれ?そういえば、日向くんと琥珀って知り合いなの?」
琥珀「えぇ。…中1の時、同じクラスだったんですよ。しかも隣の席。僕、授業中はよく寝ていたので、その度に日向くんに叩き起こされてましたね。」
黄葉「へぇ、そうだったんだ。」
日向「…そのくせして、お前いつも学年トップだったよな。」
黄葉「えっ…!?」
琥珀「あれ?そうでしたっけ?」
アイラ「あ、そうそう!しかも必修五科目だけじゃなくて、技術と美術と音楽も凄かったよね!体育は持久走以外は参加してたし、足も早かったし…」
黄葉「そ、そうなんだ…!(汗」
琥珀「…そんな事もありましたかね。もう年のせいか、あまり覚えてなくて。」
そう言ってあははっと笑ってみると、案の定日向くんに小突かれた。
琥珀「あいたっ」
日向「もう老化かよ。早ェな。」
琥珀「冗談ですよ。ジョーダン。」
アイラ「琥珀ったら相変わらずだね。…全然変わってない。」
琥珀「…1年でかなり変わってたら、それもう僕じゃ無いですよ。」
アイラ「それもそっか。」
四人は楽し気に笑った。


ーそれから二十分程経ち、四人が昼食を食べ終わったかという頃…突然、琥珀の左隣の空席にとある男子生徒が座った。
ガタッと音を立てて座る男に、四人は思わず構える。だが男はそんな四人に屈託の無い笑顔を向けた。
「どーも。お話中失礼しまっす!」
…何と眩しい笑顔だろうか。
整った顔に張り付く笑顔は、ニッコリと効果音がつきそうな程爽やかだった。

四人は顔を見合わせる。
だが誰も彼の事を知らないようだった。全員が首を振るばかりだ。
そんな中、日向が怪訝そうに問う。
日向「…誰だ。お前。」
それに男はへらっと笑って答えた。
「俺?俺は“糾未 了”。…君達と同じ1組さ。」
琥珀「…そうなんですか。」
にこりと糾未に笑いかける。
すると、突然強く抱き締められた。
勿論…糾未にだ。
琥珀「っ!?」
混乱する琥珀。
固まる三人。

ーそこで彼は宣言した。
…衝撃の一言を。


糾未「そして俺は琥珀のルームメイトであり、琥珀の彼氏となる男だぁあ!!」


……。

静まり返る食堂内。
…かなり大きな声で宣言した為、食堂に居た全員にその宣言が聞こえたのであろう。
長く続く沈黙に、食堂内の生徒達の視線が一気に糾未と琥珀に集まる。
琥珀「っ…あの!」
それに耐え兼ねたのか、琥珀は震える声を上げた。
琥珀「あの、その…理解不能なんですが…とりあえず離してもらえませんか?」
だが糾未はそんな彼女の左手を掴んで、自らの口元へと寄せる。
糾未「今朝、君が窓を割って教室に入ってきた時…俺はピンときたんだ。こいつが…琥珀こそが運命の人だって、そう感じたんだ。」
…どうやら聞く耳は持ち合わせていないらしい。琥珀が溜息をつくと、糾未は掴んだ彼女の左手の甲にキスをした。
琥珀「っは…!?」
慌てる琥珀。そんな琥珀を、糾未は楽しそうに眺める。
糾未「ふふ、可愛い反応。」

日向「なっ!!?お前何してっ!」
琥珀と同様、焦る日向に糾未は自慢気に言った。
糾未「何?俺に嫉妬?」
日向「違ェよ!琥珀が青ざめてんだろうが!!離せ!つか琥珀!ルームメイトってなんだ!?詳しく聞かせろ!」
琥珀「いや…これにはその…深い事情がありまして……出来れば、今は聞かないで頂きたいのですが…」
日向「じゃあ後で聞かせろ!俺の部屋でじっくりとな!!」
琥珀「ひぃいっ!(怖)」
糾未「ちょっと!俺を無視して話を進めないでよ!」
…もはや琥珀と日向と糾未の、三人だけの言い争い(琥珀は巻き添え)になっていた。

黄葉「…」
黄葉とアイラはそんな三人を見ながら小声で話す。
アイラ「琥珀って男子寮なんだ…」
黄葉「…でも何で男子寮に?深い事情があるって言ってたけど…」
アイラ「後で理由聞きに行く?」
黄葉「うーん…それしかないか。じゃあご飯食べ終わったら琥珀と四人で話し合おう!」
アイラ「うん!そうだね!」
そうアイラが笑うと、突然ガタガタッと椅子が倒れたような音がした。
驚いて音のした方を見てみると…、そこには琥珀を挟んで睨み合う糾未と日向の姿があった。
彼らの足元に転がる椅子から見て、2人同時に勢い良く立ち上がったのだろう。
日向「つかお前何だ。…そっちか。そっち系の奴なのか。」
糾未「俺はノーマルですぅ。…ま、でも琥珀となら別にホモでもいいかなって思ってるけどね!!」
…途中から何の言い争いか分からなかったが、とりあえず二人の言い争いは二時間にも及んだ。
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