神と化け物と神童と。

□☆龍☆
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次の日。
琥珀は図書室で目を覚ました。
琥珀「……ん…?」
ーーあ…そっか。
昨日遅くまでここで調べ物してて…それで気付いたら寝ちゃってたんだな。

布越しに目をこすりながら体を起こす。するとバサリと何かが背中から落ちた。琥珀は反射で思わずそれを拾うと、その時やっと隣の席に座りグッスリと眠る少女に気が付いた。
…どうやら彼女が、寝ていた僕に毛布を被せてくれたらしい。
琥珀「…ありがとう。」
そう静かに呟くと、少女がピクリと動いた。…どうやら起きてしまったようだ。
ーーあちゃ…やっちまった。
タイミングの悪い自分に少し呆れていると、少女は大きく欠伸をしながら起き上がった。
「ふぁ…あれ?ここは?」
琥珀「ここは図書室ですよ。」
笑って話しかける。少女はそんな僕に驚くと、次に手をぽんっと叩いた。どうやら思い出したらしい。
「そうでした!昨日エコは1組の皆様に係りの伝達をしに回っていた途中だったのです!」
琥珀「…係りの伝達?」
「はい!あ、申し遅れました!1組伝達係りの正田エコです!!宜しくお願いします!鴉闇さん!!」
元気良く敬礼をするエコに、琥珀は笑みを零す。
琥珀「宜しくお願いします。…では正田さん、僕の係りは何ですか?」
エコ「えっとですね…鴉闇さんは毒味係りです!!」
琥珀「…はい?」
僕は正田さんの予想外のその言葉に耳を疑った。
ーー毒味…係り?何だその係りは。
…そんな係ある訳がないだろう。
今のはきっと聞き間違えだ。
僕が聞き間違えた…ただそれだけの事なんだ。

だが正田さんはそんな困惑する僕にもう一度大きな声で言ってくれた。
エコ「鴉闇さんは毒味係りです!」

ーー僕の耳は…残念な事に正常らしい。どうやら、僕は何かしらの毒味をしなくてはならないようだ。
…何て係りだ。
誰だよこんな係り作ったの。
心の中で不満をブチまけながらも琥珀はにこりと微笑む。
琥珀「…そうですか。…わざわざ伝達ありがとうございます。」
エコ「いえいえ!!これはエコの仕事ですから!!」
エコがそう笑った、次の瞬間。

カッ!!

突然眩い光が辺りを包んだ。

エコ「わっ!!?」
目を開けていられない程の光。
琥珀「っ…!?」
琥珀は硬く目を閉じた。


ーカシャッ。

琥珀「!」
次に目を開けた時には、僕は見た事のない森の中で倒れていた。
ーーこれは…隔離型、か。
起き上がって辺りを見回してみるが図書室どころか学校さえも見当たらない。見渡す限りの森だ。
ーー面倒だな…。
…とりあえず後二人探さないと。
そう瞬時に判断すると、琥珀はゆっくりと立ち上がった。パッパッと背中や尻についた埃を払い落とす。

がさっ!

すると、背後から物音がした。
琥珀はゆっくりと振り返る。
「お前が最後の一人か。」
「…」
そこには…同じ楢鹿の生徒と思われる男女が立っていた。
案外アッサリ集まったなと琥珀が苦笑いをしてみせると、茶髪の少年が元気良く叫んだ。
「俺は3組の松田 健斗!んで、隣の無口なのが5組の…えっと……ロア…何だっけ?」
「…ロア・リアルマーです。」
ぺこりと頭を下げるロアを見て、琥珀はギクリと肩を強張らせた。
ーー5組…だと…?
冷や汗がドッと滲み出る。
ーーマテマテマテマテ。嫌だよ??
なに?このメンバー構成!!?
5組って僕生き残れんの!?
…無理だろ!(泣)

琥珀がそう心中で取り乱すのも無理はない。
何せ“1年5組”は呪われているのだ。
5組の担任である十 貞九郎に。
…1年5組は毎年短期間で生徒が全滅する「十の呪い」なるものが存在しており、一昨年は10日で全滅するという新記録を作ってしまった恐ろしいクラスだ。その為に十は給与を2割ほどカットされているとか…。
…っと…それはどうでもいい。
とりあえず5組の生徒が絡むと後々厄介な事になるのだ。しかも今回途中でロアが死んだりしたのならば…もう二度と元の世界に戻る事は出来ないだろう。
ーーあぁ…何か走馬灯が見える。
琥珀が密かに心の中で涙を流していると何も知らない健斗が琥珀に明るく尋ねかけた。
健斗「で?あんたの名前は?」
琥珀「……申し遅れました。僕は1組の鴉闇 琥珀です。…えっと…宜しく……お願いします…」
ズウゥンと暗いオーラを漂わせる琥珀。そんな彼女にロアは申し訳なさそうに微笑んだ。
それを見て琥珀はハッと我に返る。
ーーし、しっかりしろ自分…!
常に5組に居なきゃならないロアちゃんの方が辛いんだぞ!?僕がそんな彼女を支えなくちゃいけないのに…こんなんじゃダメだろ自分!

琥珀は自らの顔を両手で叩く。
二人はそれを見て驚いたような顔をしていたが、琥珀は気にせずロアに手を差し出した。
琥珀「…さぁ行きましょう!」
ロア「!…(こくん」
健斗「…じゃそろそろ行くか!鴉闇も元気でたみたいだしな。」
琥珀「はい!」

そうして琥珀達は森の奥へと進んで行ったのであった。
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