神と化け物と神童と。

□☆夢☆
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あれから光希くんに“自分自身の情報”を教えてもらった僕は206号室へと向かっていた。勿論、日向くんに布を返してもらう為にだ。
やはり長い間一定のモノを身につけていると、いざ失くなった時に落ち着かないものだ。潤目くんにも早く会いにいかなければならないのだが…布が無い今は日向くんに会うのを最優先させなければならない。
それ程までにあの布は僕にとって必要不可欠なモノであるという事だ。

かつん。
静まり返った廊下に、僕の踵が床に擦れる音だけが響き渡る。
琥珀「…何?この静けさ…」
思わずボソリと呟いて辺りを見回す。だがやはりひと気はなく異様な程の静けさが漂っていた。
ーーちょっと…僕が死んでる間に何が起こってたわけ?怖いんだけど。
少し不安になりながらも歩いていると、やっと206号室についた。
僕は深呼吸をして扉をノックする。
琥珀「…?」
返事はない。
もう一回ノックしてみるがやはり返事は返ってこなかった。
ーーあれぇ…出かけてんのかな?
つか勝手に入っちゃ…駄目だよね。
うーん。どうしようかなぁ。
うむむと悩みこむ。

その時、琥珀はふと何処からともなく聞こえてくる叫び声に気付いた。
琥珀「…ん?」
再び辺りを見回す。
すると、寮の扉の方から走ってくる2人の男子生徒の姿が見受けられた。
ーー確かあの2人って…美濃くんと辰巳くんだよね?…何やってんだろ?
最初は二人仲良く鬼ごっこでもしているのかとも思ったが、それにしてはあまりに危険すぎる鬼ごっこだ。
何せ辰巳は“戟”を振り回しているのだ。もうあれは美濃を殺す気満々って所だろう。
ーーえと…2人の間に何があったんだろうか。美濃くんは一体何をやらかしたんだ?
少し心配になり、ジッと美濃を見つめていると突然彼が此方に向かって全速力で走って来た。
美濃「鴉闇じゃん!!やっほ!!」
明らかに何か企んでいそうな彼の顔を見て、琥珀は本能的に逃げる。
琥珀「どうもです。…で、その状況は一体何なんでしょうか?」
美濃「やー何か帳に操られてるらしくてさ!俺今すっごいピンチ!!」
琥珀「はぁ…それで何でこっちに向かってきたんですか?」
美濃「鴉闇強いって聞いたから!何とかしてもらおうかと!!」
親指を立てて「お願い助けて」と焦った表情で叫ぶ美濃。
琥珀は盛大に溜息をつくと辰巳の方に向き直って立ち止まった。美濃もそれを見て、少し離れた所で立ち止まる。
美濃「…?」
一体何をするのだろうと不思議そうに眺める美濃。そんな美濃の視線を感じながら琥珀は構えをとった。
ーー“眠”で眠らせようかとも思ったけど…それだと何も鍛えてない僕にかなりの負担がかかる。だから…この方法が1番手っ取り早いんだ。
琥珀は辰巳に向かって走り出す。
辰巳「…」
辰巳が戟で琥珀に攻撃を仕掛けると琥珀はそれを上手くかわし、辰巳の鳩尾に拳を突き入れた。
美濃「!」
辰巳「ッッ!」
どすりと鈍い音が聞こえ、辰巳が戟を床に落とし琥珀に倒れかかる。
琥珀がそんな彼を抱きかかえると美濃が小走りで向かって来た。
美濃「す…すげぇ…」
琥珀「原始的ですが…これしか僕には出来ないので。」
そう言って辰巳を抱きかかえると、辰巳は一度閉じた瞳をうっすらと開けた。そんな彼の目には先程とは違い光が宿っている。琥珀はそれを見て安心すると、彼に笑いかけた。
琥珀「辰巳くん…大丈夫ですか?」
辰巳「…!!」
こくこくと頷く辰巳。
美濃は安堵の溜息をつく。
美濃「…マジで死ぬかと思った。」
琥珀「殺す気満々でしたからね。」
くすりと笑うと美濃は複雑そうな表情を浮かべた。
美濃「…とりあえず…操も解けたみたいだし、日向達と合流すっか。」
琥珀「ですね。僕も日向くんに用事がありますし。」
美濃「…布か。」
琥珀「ええ。」
あれがないと落ち着かないので、と困ったような表情で笑うと美濃は顔を赤らめた。
琥珀「…どうしました?」
美濃「…何でも無いから気にすんな。…それより早く日向達捜しに行こうぜ。」
琥珀「あ…はい。」
早足で行く美濃に琥珀も小走りでついていく。そんな二人を辰巳はぼーっと眺めていた。
辰巳(…素直じゃないな…)
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