神と化け物と神童と。

□☆ルームメイト☆
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それから言い争いがやっとの事で終わり糾未と別れると、四人は206号室…つまり日向と黄葉の部屋に集まっていた。

胡座をかき、腕を組んで座る日向。
その前には冷や汗を垂らしながら正座をする琥珀の姿があった。
そんな二人の間には妙なぴりぴりとした空気が漂っている。
日向「…」
暫しの沈黙の後、日向はゆっくりと口を開いた。
日向「…琥珀。お前に一つだけ聞きたい事がある。…分かるな?何故、お前が男子寮の部屋なのかだ。」
琥珀「…いやぁ…その………話せば長くなるというか…」
日向「簡潔に話せ。」
そう言う日向の顔は怒りに満ちていた。…恐らく先程までの言い争いが原因でもあるのだろう。
ーーうわぁあっ…おこだよ。
日向くん激おこだよッ…。
どうしよ…。
これはハッキリ事情を話すべきだよね?つか話さないと殺されそう。
あの目は本気だわ。

琥珀は一度大きく深呼吸をすると、次に小さな声で言った。
琥珀「…記入ミスです。」
と。

それを聞いて他の三人は固まる。
アイラ「…記入…ミス?」
琥珀「はい。…その…高校に提出する証明書に、性別の丸つけ欄あったじゃないですか。それ丸つけてなくて…。しかも僕…名前が“琥珀”でどちらかというと男を連想させる名前ですし…。…それで…何か…気付いたら男子寮に…」
少しずつ俯いていく琥珀を見て、日向は溜息をついた。どうやら怒りを通り越して呆れたらしい。
日向「…そんな事だろうとは思ってたが…。…お前、ホント馬鹿だな。予想通りすぎて怒る気失せたわ。」
琥珀「…反省してます。」
日向「…つかお前制服は?…やっぱ男用なのか? 」
琥珀「届いたのは男用ですが、一応今日は母のお古を…」
そう言って琥珀が羽織りを脱いでみせると、確かに琥珀は女生徒の制服に身を纏っていた。
三人が見たのを確認すると、琥珀は再び羽織りを着る。
琥珀「…とりあえず…暫くは面倒な事にならないように男装するつもりです。その…協力お願いします。」
日向「…まぁ…仕方ないか。」
黄葉「僕達も協力するよ!」
アイラ「あ…でも、お風呂とかはどうするの?」
琥珀「糾未くんがいない隙を狙って部屋のお風呂で済ませるつもりです。」
アイラ「そっか!じゃ大丈夫だね!」
にこりと天使のような笑みを浮かべるアイラ。そんなアイラに、僕は思わずときめいてしまった。
ーーあぁ、何て優しい子なんだ。
僕のためなんかに親身になってくれるなんて…!
…やばい。
感動して涙が出てきそう。

…勿論、琥珀はその後みっちりと日向にお説教されたのであった(抜けている所を重視して)。


ーそしてその日の夜。
事件は起きた。

殆どの生徒が寝静まった後の事だ。
琥珀「ぅう…」
琥珀は腹部に妙な圧迫感を感じ、薄っすらと目を覚ます。
…暗くてよく見えなかったが、自分の上に何かが乗っかっているという事だけは分かった。
琥珀「…ぇ……」
琥珀はその黒い物体を見て、思わず体を強張らせる。
ーーおいおいおい…ちょっと待て。
これってアレじゃね?何か怖い話とかでよくあるアレじゃね?
金縛りとかなってたら…うん。
アウトだわ。

琥珀は少し怯えながらも、そっと上半身だけを起こしてみる。
…だが意外にも体は軽かった。どうやら金縛りにはあってないようだ。
琥珀がほっと胸を撫で下ろすと、上に乗っていた黒い影が微かに動いた。
「ん…琥珀…」
ーーひぃいい!?
動いたぁあ!喋ったああああ!!?
…って……あれっ?!
琥珀は聞き覚えのある声の主を見て焦りを覚えた。
冷や汗がダラダラと流れ出す。
ーーまさか…こいつ…。

琥珀「糾未、くん…?」

琥珀がそう呟くと、糾未は先程よりも強く琥珀を抱きしめた。
糾未「うぅん…いい匂い……」
そして琥珀はその時初めて、自分が今どれ程危険な状況に置かれているのかを知らされた。


琥珀「うわぁああああ!?」
遅れてやってくる驚きと悲鳴。
だがそんな琥珀の声を聞いても、糾未が起きることは無かった。
…完全に熟睡しているのだ。
糾未「琥珀…んん…」
琥珀「ちょっ抱きつかないで下さい!!離し…離してぇええ!!」
もはや半泣きで叫ぶ琥珀。
殆どの生徒が寝静まったであろう今、誰か助けが来るとは到底思えなかったが…もうこれしか助けを求める手段が思いつかなかった。
ドンドン!!
琥珀は隣の部屋、つまり日向と黄葉の居る206号室の壁を激しく叩く。
琥珀「無理無理無理!!日向くんか黄葉気付いて!!初日から僕大ピンチなんだけど!!」

そうやって暫く騒がしく音を立てながら暴れていると…突然、部屋の扉が勢い良く開かれた。
と同時に響く、とある人物の怒声。
「うっるせぇな!!壁薄いんだから声のボリューム下げろ!」
そんな彼の声を聞いて、琥珀は目を輝かせた。
琥珀「日向くん!?」
締め切っていたカーテンを開け、そこから部屋の入り口を見下ろす。…そこにはやはり日向の姿があった。
日向は琥珀の顔を見るなり、少し不機嫌そうな顔をした。
日向「琥珀!お前さっきからドンドンうるせぇ…って、何でそこに糾未が居るんだ?」
琥珀「糾未くんが寝ぼけてコッチのベッドに来たんですよ!!わぁあ!起きて糾未くん!!日向くん助けて下さい!!糾未くんが寝ぼけながらセクハラしてくるんですよ!!(泣」
日向「…は?」
今まで見た事ない程までに取り乱してる琥珀を見て、日向はぽかんと口を開けていた。
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