神と化け物と神童と。

□☆龍☆
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暫く歩いていると、3人は少し開けた場所に出た。
大きく聳え立つ扉(外見的に多分文字は“龍”)がある事からして、恐らく出口はここで間違いないだろう。
…問題はこの隔離型からどう抜け出すかだ。

ーー「力」か「技」…か。
…このメンバーだと技の方が無難な気がするな。
やっぱ力じゃ奴には勝てないよね。
僕は非力だし。
ロアちゃんは…うん、非力そう。
松田くんは…考えなしに突っ込んでいきそうだから却下な。
…やっぱ技がいいね。うん。

琥珀が一人頷いていると、門に飾られている龍が突然喋り出した。
「我は龍。汝らに試練を与える者なり。ここより無事下界へ出たくば、我が試練を受けよ。」
それを見て驚く健斗。
健斗「何!?こいつ喋った!!?」
琥珀「……はぁ。」
ーーこいつ…何も知らないでここに来たタイプか。…あぁ…面倒だな。
お願いだから早く慣れてくれよ。
楢鹿に。

呆れる琥珀に困惑する健斗。
だが龍は話を続けた。
龍「この扉の鍵は我が体内にあり。それを見ん事手中に収めてみせよ。方法は二つ。一つは“技”を用いて我に挑む法。もう一つは“力”を用いて我に挑む法。技か力か…汝らが選択し、我を打破せよ。」

ーーはいはい…僕等技なんで。
そんな説明要りませんよーってね。

琥珀が密かに変を発動しようとした、その時。…馬鹿がやらかした。

健斗「何処から声出てんの?」
がっ!!
…健斗が興味津々といった様子で龍を蹴っていたのだ。
勿論それを見て琥珀は青ざめる。
琥珀「ばっか…!!?」
健斗「…え?」
だが時すでに遅し。
龍「心得た。力にて我に挑むか。…汝らの意思確かに受け取ったぞ。」
…龍は力の試練で動き出してしまったのだ。
「「!!」」
バリッと扉から剥がれる龍を見て、琥珀とロアが後退する。
健斗「え!?えぇええ!!?」
混乱する健斗に琥珀は叫んだ。
琥珀「逃げて下さい!松田くん!」
健斗「えっ!?お、おおう!!」
慌てて何処かへと走り去った健斗を見て琥珀は溜息をついた。
ーー面倒な事になったな…。
…もうこうなったからには仕方がない。殺るしかないだろう。
…だからお願い。
死なないでくれよ…?松田くん。

琥珀は文字を発動させ、ロアと共に戦闘体制に入った。



…そして数分経った頃。
琥珀は一人立ち尽くしていた。

ーー鍵は…手に入った。

仄かに光を放つ鍵を握りしめる。
そんな琥珀の側には、多量の血を流し倒れる健斗と腕から血を流すロアの姿があった。…二人とも鍵を取る途中で龍にやられてしまったのだ。
琥珀はそんな二人を見、ぎりっと歯を食いしばった。

ーーだけど…三人揃わないと出られないんだよな。

目の前に聳え立つ門を見上げる。
門とそれに張り付く龍の姿は…酷いモノだった。白かった体は黒く染まり、酷い異臭がしていた。龍の体の一部が溶け出し、ボタボタと目の前に落ちてくる。
琥珀はそれを見て確信した。
“自分は死ぬのだ”と。

ーー昔、母に教えて貰った事がある。白き龍は人間に試練を与え…黒き龍は人間に裁きを与えると。
…つまり今目の前にいる龍は僕に裁きを与えるつもりなのだ。三人揃って扉の前に来なかったから。
……あぁ。自分は弱すぎる。
こんな龍一匹から友達二人を護れないなんて。

琥珀はぎゅっと拳を握りしめた。
ーーでも…まだ僕は死ねない。

すると龍の頭が少し門から離れた。
…どうやら僕を焼き殺す準備は整ったらしい。
龍「…汝が残りの人間か。」
琥珀「…まぁ。」
曖昧な返事で返すと、龍は首を横に振って言った。
龍「…一人欠けている以上、汝をあちらに帰す訳にはいかん。…蝕の終わりを待つまでもない。この場で果てよ。」
残酷にも吐き捨てられた言葉。
それを聞いて琥珀は目を瞑った。
ーーこんな所で死ぬもんか。

龍「汝も消し炭となるがいい。」
そう龍が叫んだ時、琥珀はカッと目を見開いた。

ーー僕は強い自分に…変わるんだ!
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