神と化け物と神童と。

□☆宴☆
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グラウンドに出てその蝕を間近に見てみたが……彼等は戦う気など無さそうだった。
…というか何やら楽しそうだ。

ーーなんだアレ。
…あの人達倒して来いってか?
日向「…」
日向も己の“智”で蝕を調べるが、名前が“宴”だという事しか分からなかった。
ーーNO DATA…か。
つまり対策は無いと。…参ったね。

琥珀が面倒くさそうに溜息をつくと突然側に居た糾未に腕を引かれた。
糾未「琥珀!酌をしよう!」
唐突の一言。
思わず琥珀は素で聞き返した。
琥珀「…あ?」
糾未「だってさ!あのデッカい人がそう言ってるし…楽しそうだよ?」
ーー子供か…こいつは。
つか僕金輪際近寄るなって言った筈なんだけど。…いや…無駄か。
こいつに言っても。

糾未「ね?ね?行こうよ!」
はしゃぐ糾未を見ながら、琥珀は再び溜息をつく。
琥珀「…糾未くん。風邪というのはアルコールを含むと悪化するものであり…それがたとえ匂いであっ…ぎゃああ!!」
琥珀は言いかけて悲鳴を上げる。糾未が痺れを切らし、琥珀を担いで宴の元へと向かってしまったのだ。
琥珀は暫く暴れていたが……抵抗も虚しく、最終的に七福神達の酌をさせられるハメになってしまった。


黄葉「琥珀…」
日向「糾未の野郎…」
取り残された黄葉達は、心底嫌そうな顔をして酌をする琥珀を…遠目から見守った。



「にしても小僧は男のわりに肉がついとらんのぉ。」

さわっ。

琥珀「ひっ…!?」
酌をしていると、突然七福神の一人が僕の身体に触れてきた。僕より何倍もデカイその神の手は壊れものでも触るように優しく触れる。
…だがその手に不快な事には変わりなかった。

ーーいつもなら…うん。
抵抗してる所なんだけどね……。

琥珀はついさっきあった出来事を思い出し、首を振った。

実は先程この神が他の女子生徒に手を出した時、袴田が蹴りをかましてしまい…宴の怒りに触れた袴田の首が吹っ飛ぶというスプラッタな出来事があったのだ。…まるで赤い果実が砕け散ったような…そんな感じだった。うん。
琥珀「…はぁ…」
琥珀もやはり命は惜しい。
だから彼女はエロ神のお触りにも屈せずにただただ彼等の酌をしているのだ。
それは何とも殊勝な様だった。

琥珀「…さ、どうぞ。どんどんお飲みになって下さいませ。」
頑張って大きい盃に酒を注ぐ。
すると七福神様は大層ご機嫌のようだった。
「おぅおぅ。気が利くのォ。」
「小僧、妾にも一杯おくれ。」
琥珀「はい!」

琥珀は精一杯、酌をした。


ーそれから暫くすると…蝕が終わり七福神様達は空へと帰っていった。
それを見送りながら黄葉が呟く。
黄葉「…なんだったの?」
日向「さぁーな。」

ザッ。
そんな二人の前を酷く不機嫌そうな顔をした琥珀が通り過ぎる。
琥珀「チッ…あの野郎…」
…本当に機嫌が悪そうだった。
そんな彼女を黄葉が呼び止める。
黄葉「あっ琥珀!!お疲れ様!」
琥珀「…黄葉と日向くんですか。……どうも。今朝ぶりですね。」
琥珀がニコリと笑って見せると、日向はピクリと眉を動かした。
日向「…お前…さっきより声酷くなってないか?」
黄葉「そういえば…何か顔もさっきより赤い気がする。…大丈夫?」
琥珀「…多分…お酒のせいでしょうね。…あの能無しが。」
ボソリと呟く琥珀。
そんな彼女を見て二人は思った。

(アレ…琥珀ってこんなんだっけ?)




(辛い時や苦しい時)
(そんな時人は)
(本性を現すという)
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