開拓史

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 それぞれに合わせたカリキュラムを提示され、生活の時間表も合わせて見せられてから、居住区へと移動した。
「…じゃあ、さ、帰ったら逆に危ないってこと?」
 10年後、地球規模の災害が起こる。それが信じられる話なのか。判断材料は何もない。
「でも…、良かったね。」
 今まで黙って聞いていたメリサが、笑顔でルトゥェラの方を向いた。
「何がよ。」
 訝し気に返したルトゥェラに、メリサは言う。
「私たちが最初ってことは、その星に凶悪犯はいないってことでしょ?一つ心配が減ったね。」
「…まあ、ね。でも、無理やり開拓団にされたのは変わりないじゃない。私達まだそんな知識無いのよ?」
「着くまでに勉強しろってことでしょう?なんか、一応素質を見て選んだって言ってたし。大丈夫だよ、きっと。」
「…あなた…暢気ね。」
「…ごめん。…でも、私は帰るより、行ってみたいかな。」
 出発前に泣きぬれていたことなどすっかり忘れて、メリサは希望の瞳で宙を見上げる。と、そこにエダの手が降ってきた。ポンポンと頭を叩く。
「俺はこいつに賛成。あんな話聞いたら帰る気削がれたわ。地球より目的地の方が安全な気がする。」
「そりゃそうだけどさ、あの話がホントだったら、だろ?」
 ニックが苦りきった顔をしてそう言った。
「嘘吐く理由ってあるかしら…。」
 スーザンの呟きに、モコがうーんと唸る。
「僕たちを行く気にさせるため、とか。」
「じゃあ、そもそも、僕たちが選ばれて乗せられたのって、脳波の所為だったのか、開拓させるためなのか、どっちだと思う?」
 セイゴの問いに、全員が考え込んだ。
「ホントに脳波がどうこうって話だったら、普通、病院とか更生施設送りでしょ?びっくりしたもん、囚人服見た時。」
「そうね、確かに。凶悪犯として扱ったこと自体、不自然だもの。あの人の話、信じてもいいんじゃないかしら。」
「そう?もし、私たちの脳波に今までなかった扱い難い結果が出たとしたら、異端者として放り出そうって思うかもよ?」
「でも、だったらあんな話して行く気にさせる必要なんかないだろ。有無を言わさず放り出せばいいだけだ。」
 うーん、とまた唸る。
 多数決を取ろう、という話になった。
「帰りたい人。」
 スーザンがそう言って全員の顔を見回す。
「あら、一人もいないの?ルトゥは?」
「…やっぱり行き先の方が安全な気がするわ。」
「なんだ、決まりだね。」
 じゃあ、ペナルティ食らわないうちに部屋に戻ろう、とセイゴが言い、それぞれが分かれていく。
 ニックはニーナの頭を撫でて「大丈夫か?」と気遣っていた。
「大丈夫。ニックが行くなら私も行く。」
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