開拓史

□5
1ページ/10ページ

光はそこに


 肉眼で目的地が確認できる頃には学生のような勉強の時間は殆どなく、実際の開拓の手順を確認したり練り直したりと話し合いをすることが増えた。その惑星の環境が地球に酷似しているのは確実だとデータが告げている。しかし、だからと言って簡単にその大地に降りていいかと言えばそうではない。
「あ、ほら、まただ。これ、何だよ。」
 エダが顔を顰めてリアルタイムの観測データを眺める。
 スーザンは困り顔を向けて「こっちが訊きたいわよ。」と返した。
 環境は地球と同じはず。だが不可解なデータが時折飛び込んできた。
「今度は高熱?それとも電気?」
 モコがちょっと笑ってそう訊いた。
「笑い事じゃないのよ。訳が分からないんだから。」
 スーザンはモコの様子に呆れながら、エダの指さす場所を覗き込む。
「低温。零下。周りの気温は変わらず、この一点だけだ。」
 地表を観測していると度々そんなデータが取れた。局所的、一時的な急激な温度変化、時には雷のような瞬間的な電流。
「これどうすんだよ。場所も特定されないし、原因も解らない。人間が暮らすには危険すぎる。」
「…何もない時は穏やかなんだけどね。災害規模でもないし。」
 不思議なのは、その変化の直後にはもう何もなかったかのように元に戻っているということだ。当初、急激に温度が上がったのを見つけた時は、マグマの噴出、つまり噴火ではないかと予想を立てた。しかし、その後の観測でそれはあり得ないと分かった。
「地表にはなんも変化なし、まるで空気中でいきなり炎が上がったみたいに…。」
「メタンガスとか、可燃性のガスが爆発したんじゃないのか?」
「それはあるかも。でも、だとしたら、いつどこで爆発するかわからない環境で、まともに暮らせるとは思えないわね。」
「高温はそうだけどよ。低温は?なんでいきなり空気が冷えるんだ。周りに原因になるようなこと起こってないぞ。」
「急激な…気圧変化とかは?上昇気流とか。」
「観測されてない。」
 ああでもないこうでもないと言い合う中、ルトゥェラがメリサに合図して部屋から出た。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ