氷菓

□幕間劇
2ページ/2ページ





やってきました。隣町のプール施設。市営プールのような小さなやつではなく、屋内に建てられた、スライダーやらなんやらのアトラクションが目白押しな大きなプールだ。


「しかし遅い」


家に取りに戻るという選択肢を捨て、レンタルの水着を纏ってどれくらいか。おそらく五分はとうに過ぎている。
女子は準備に時間がかかるとよく言うが、本当にそのようだ。
いや、少し待て。


「もしかして…ナンパ」


あるいは迷子。…ないな。あの二人が迷子なんてそれこそ笑い物だ。
だとしたら、やっぱりナンパか。冬実も供恵さんは美人だ。あと胸が大きい。十二分にありえる。


「探してみるか…」


きゃあきゃあ。わあわあ。そんな楽しそうな声と水の音を背に、脱衣場の方に足を進めた。
右を見たり左を見たり。たまに後ろに振り返ったりしながら歩くと男四人の後ろ姿。髪の毛は染めているのか金髪が目立つ。中には褐色肌の男もいる。


「連れがいる。通せ」

「デート中なわけよ。だから、邪魔」

「じゃあ混ぜてよー」


………本当にいるんだね、ナンパ。二次元の世界だけかと思っていたよ。


「警備員でも呼ぼうか」

「そんなことしないでさ、ね」


男たちに近づいて、咳払い。案の定、こっちを向いてくれた。


「真琴…」


冬実と目を合わせてから、睨む男に笑う。


「自分の連れだから、ごめんよ」


俺の笑みが気に食わなかったのだろう。舌打ちされて、囲まれた。


「お前一人かよ」

「まあ」

「男一人で女二人とか、チャラチャラしてんじゃねぇよ」


チャラチャラしてるのはどっちだか。


「じゃあ俺たちも混ぜてくれよ」

「のーせんきゅー」


テメェ、そんな怒号が響いた。
ごめん。自分のこの性格に問題があるのは分かるけど直らないよ。でも、君たちにも問題はあるよね。モラルだよモラル。


「調子乗ってんじゃ」

「他の皆さんに迷惑がかかるのでお静かに」


言い切る前に、前にいた男の股間に蹴りをいれた。いわゆる金的。


「ゔっ」

「っ、おい!」

「静かに出来なきゃ…やっちゃうぞ」


瞬間、男三人は駆け足でもう一人は内股でどこかへ行ってしまった。


「走ると転ぶぞー」


見送って、冬実と供恵さんにいつもの笑みを見せる。二人の顔がひきつっていた。


「変なことされてない?」

「大丈夫よ。ありがとう真琴」

「さすが私の恋人候補」


二人の姿を改めて確認する。
冬実は黒のビキニ。供恵さんはブラウン系のビキニ。出るとこ出て締まるとこ締まってる。


「目つきがいやらしい」

「ご馳走様です」

「お粗末様です」

「真琴も先輩も…」


人溜まりの方に行けば二人は注目の的になるのではなかろうか。


「あ。助けてくれたご褒美よ」

供恵さんが俺の右手をとって、誘導する。そのさきは。


「っっ!」

「………メロン」


冬実の胸だった。


今日は楽しめそうだ。そう思ったと同時に、ボディーブローを打ち込まれました。

.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ