ハイスクールD×D

□life.0
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「彼」の人生が一変したのは二十年以上昔の話だ。
それまで「彼」は少年で、子どもであった。西洋の地に住んでいた家庭。母がいて、父がいて、弟がいる。他と何ら変わらない家族。人生。しかし、一つだけ現実離れしたものがあった。それは、

「あそこだ! 捕まえろっ!」

ある日、突然両親は死んだ。殺された。今まで良い関係だった町の住人にだ。
「彼」は何故と理由は問わなかった。「彼」 は知っていたからだ。両親が「外れた事」をしていたのを。否、両親にとっては「外れた事」ではないだろう。ただの「事」だ。しかし町民にとって「悪魔に魂を売ったモノ」になる。悪魔とは意味嫌われるもの。宗派が色分けされている彼らの国では悪魔は絶対悪。

「……ちくしょう」

しかし、だからと言って。

「このクソガキが!」

「うっ…」

「にいちゃん!?」

何がいけなかった。悪魔に祈った両親か。それとも町民か。悪魔か。

「童。お前の両親を殺すようにそそのかしたのはこの私だ。不運だな、子どものために悪魔に祈り、そのせいで殺されるなど。まあ、悪魔に手を貸した時点でアレも悪魔よな。……お前たちもまた」

なんで、どうして。
絶望より先に走ったのは怒り。

「にいちゃん…僕…」

「大丈夫、兄ちゃんが守ってやるから」

ゴミを漁り、泥水をすする。それは生きるため。
力を欲した、力をつけた。それは、守るため。復讐を成すため。

「ヤツらは何もしてくれない。願っても、喚いても。ヤツらは傍観だけだ、苦しむ俺たちを鼻で笑いやがるだけだ」

元凶である悪魔を恨んだ。
絶望に追い込んだ堕天使を恨んだ。
手を差し伸べてくれない天使を恨んだ。

そして、無力な自分を恨んだ。


「な、何故人間ごときがっ!?」

「人間の分際で…っ!」

「我に矛を突きつけるというのか…!」

そうして「彼」は拳を振るう。

「熾きろ、セイクリッド・ギア!!」

人間は弱い。そんな人間のために「彼」は拳を振るうのだ。


「人間ナメるぁアアアァァッ!」

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