ハイスクールD×D

□life,02
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兵藤一誠という少年は"元"人間だ。
人間の少女に扮した堕天使が、彼の内に眠る神器<セイクリッドギア>と呼ばれる異能な力を危惧し、殺した。
そこで一誠は願う。おまじないの紙切れに。まだ死にたくないと。その根本なる理由は笑えるほど馬鹿なものだ。しかし願いは叶った。紅の悪魔により、"彼女"の下僕兵士<ポーン>として悪魔になった。

「なんだよ、なんなんですか、今日はついてるじゃねぇかよっ! クソ悪魔共がひーふーみー、あぁっ数えるの面倒くせー!」

「うるせークソ神父! きたねぇ手でアーシアに触んなっ!」

「イッセーさん…」

「あはは、きたねぇ…? きたねぇ…きたねぇだぁっ!? ぶっ殺すぞ汚物っ」

大量の血で施された暗い一室。
一誠と対峙するのは異端のレッテルを張られた悪魔祓い<エクソシスト>。
そのエクソシストによって傷を受けた一誠にたいして、金糸を靡かせる少女は悲痛な顔で見守る。見守ることしかできない。
人ひとりが殺された部屋、痛めつけられる優しい少年。それだけで彼女は目を赤らめ、身体を震わす。

「イッセー、もう時間がないわ。多くの堕天使が近づいているみたいなの。ここはジャンプして撤退するわよ」

「アーシアは!?」

「…諦めなさい。魔法陣ジャンプは私の眷属しかできないし、なによりあの子は堕天使やはぐれエクソシストに組みしているのよ。わかる? 私たち悪魔にとっては敵なの」

「でもっ!」

ついこの間悪魔に転生したばかりの一誠には堕天使だから敵、エクソシストは忌むべき存在などと言われてもわからない。
目の前にいる、先日出会った女の子を助けたい。敵側についていようとも。悲しそうな顔をさせたくないと思った。
なのに、自分には"力"がない。悪魔になったのに、人間の時とそう変わらない。無力。

「イッセーさん」

「アーシア…っ」

「また、また会いましょう」

それははたして叶うのか。
まるで今世の別れの言葉だ。アーシアと呼ばれた少女は恐怖と悲しみを打ち消して、優しくニッコリと笑っていた。
そしてそれが今までの中で一番綺麗な笑顔だったというのは皮肉な話だった。
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