短編
□拍手
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『 SAO 』
わたしは、見てしまった。おそらくこの世で一番目にしたくないものを…。
暇を持て余した私は、合い鍵を使ってお兄ちゃんが借りているマンションの一室に上がり込んだ。居るなら居るで、外出なら外出で驚かせようと思って連絡をしなかった。連絡をしていれば、目にすることはなったはずだ。だけどもう…遅い。
「はぁっ…あぁっ…、颯真さんっ…んあ…いいっっ」
扉の隙間から見える情事。明かりはなくて、中は暗い。牡と牝の臭いが部屋の外まで漂っている。
なんだアレは自分に問いかける。なんでだと目の前の出来事に黒の感情を抱く。
「んはぁ…っ、あぁぁ…あぁぁっ……もっと、し…てっ」
男は結城颯真。SAOではソーマと名を轟かせた、私の兄。
女は桐谷直葉。SAOで出会ったキリト…和人くんの妹。
ふたりは衣服を身につけていない。裸で組み合っている。彼女の牝に堕ちた喘ぎ声が実に不愉快だった。
「っ」
自分の唇から滲み出る赤い液をそのままに、扉の向こうの女を睨む。
なんでお前がそこにいる。なんでお前がお兄ちゃんとそんなことをしている。
退け。汚いものでお兄ちゃんを汚すな。
退け。お兄ちゃんに触るな。牝の鳴き声を止めろ。
「あぁっ…いいよっ…出して、出してぇ…っ」
止めてお兄ちゃん。そんなヤツにッ。
「んああぁぁっっ…!」
繋がった、結合部から溢れ出る白いもの。頭がおかしくなりそうだった。
恍惚としている牝が憎い。
桐谷和人に好意を抱いていたんじゃないのか。
「ん…はぁ……っ」
口づけ。それを見て、私のお兄ちゃんが穢されたと思った。否、お兄ちゃんを完全に穢された。
つい先日まで何もなかったのに。今はこうして身体を重ねている。
下腹部が熱くなるのに対して、頭と心は冷え切っていた。
私のお兄ちゃんが穢されて、奪われた。お兄ちゃんはきっと騙されてるんだ。
「え…赤ちゃん? …ん、大丈夫だよ……大丈夫…」
意味深に、白いものを溜め込んだ腹を撫でる牝。ブチリと何かが切れた気がした。
「なに、やってんの」
「ア、アスナさん…っ!?」
「なにやってんだって聞いてんだッ!!」
お兄ちゃん。今助けてあげるからね。大丈夫、今度は私が助けてあげるんだから。
そして、私がお兄ちゃんに相応しい女だって教えてあがる。そんな醜い牝、さっさと始末しよう。
「私のお兄ちゃんから離れろォッ!!」
髪の毛を掴んで床に投げ飛ばす。
「そのお腹の中の、お兄ちゃんの全部掻き出してやる…ッ」
私のものだ。それは全部私のものだ。お前なんかに…ッ。
「いやぁッ、止めてっ止めてよアスナさんッ」
「ウルサイウルサイウルサイ! お前なんかにお兄ちゃんを盗られてたまるか…!」
ああ、お兄ちゃん。待っててね。お兄ちゃんには私がいれば大丈夫だから。安心してね。
だから、このうるさい牝、どうにかしよっか。
「あはっ…どうお兄ちゃん…んっ、私のほうが、ぁん…きもちいいでしょ…っ」
お兄ちゃんのが奥をコンコンつついてるっ。幸せ。
「ひゃぁあっ…、っぁ…またいっぱい…出たねっ」
お腹の中…もう入りきらないね。でも、勿体無いからぜーんぶ飲んであげる。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんでさっきから黙ってるのぉ? もぉー、恥ずかしいの? すぐに慣れるからね。ほら、また気持ちいいこと、しよっ」
ああ…お兄ちゃんの唇、お兄ちゃんの胸、お兄ちゃんの手、お兄ちゃんの…身体。私のものだって印つけちゃお。
そこに転がってるモノも、シリカちゃんにもリズにも、誰にも渡さない。私だけのお兄ちゃん。
「んはっ。お兄ちゃんと私の赤ちゃん…楽しみ」