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□何となく書いてみた
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私立直江津高校。学校であるわけで人が多く集まるのは当然。そして、様々な噂があるのも当然だ。
例を上げるならば、一つ、毎回テストでトップをとる委員長の中の委員長。
二つ、最低限の発言しかせず、体育や行事ごとは必ず見学欠席。ドライな女学生。
三つ、驚異的な身体能力を持つ、弱小バスケ部を最強にしたてあげたバスケ少女。
四つ、万年ボッチなアホ毛をはやした少年。
他にも噂というものがあるが、いかんせん数も多く信憑性も計りきれない。しかし、だがしかし。
注目となる噂が一つ、ある。


『必ずどこかを怪我した男子生徒』


全快状態を誰一人目にしたことがないというおかしな噂。
時には腕にギプスを。時には松葉杖を。時には車椅子を。時には顔半分を覆った包帯姿を。
一体、何故。彼の症状は嘘偽りではなく、ちゃんと医師の証明もされている。
親のDV? いじめ? 全て否。

誰かが聞いた。


「どうしていつも怪我をしているの?」


少年は怪我の痛みなど感じさせないように、笑う。


「運がね、悪いんだよ」


運。そんな、ある意味非現実的なもので片付けられることなのだろうか。
しかし彼は言う。運だと。
運が悪い……いや、『運が吸われている』と。






「空から女の子が降ってくるところをこの目で見られるなんてね。運が良いのか悪いのか」

「………」

「お前は?」


少女を抱えたまま、鬼が問う。


「僕かい? 僕は―――」





「あなた、いつも怪我してるわね。なに?実は悪と戦う正義様?」

蟹の少女が問う。


「話しかけないでください。あなたことは嫌い――にゃわ!?包帯男!? 何ですかあなた!」


蝸牛の少女が問う。


「奇遇だな先輩。しかし、先輩はいつも包帯を巻いているな。包帯フェチなのか?」


猿の少女が問う。


「えと……………すごい怪我…ですね。どうしんたん、ですか?」


蛇の少女が問う。


「また、怪我してるね。喧嘩とかいじめじゃないんだよね。理由、聞いてもいいかな」


猫の少女が問う。

何度問われようが、こう言った。


「運がね、悪いんだよ」








「ははあー。キミ、随分と珍しいモノに取り憑かれるねぇ。それこそ片田舎の吸血鬼並みだ」


「"運が良いです"」



………。



「"運喰い-ラックイーター-"。運を喰らう怪異だね」




「"彼女"と出会えたのが運の尽き。それでも僕は後悔しませんよ。"彼女"と一緒にいられることが僕の"幸運"ですから」



運を棄てた少年と取り巻く少年少女の奇妙な物語。

青春はおかしなことで満ちていた。




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