トランプの世界

□三話
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刺客に狙われたソフィアたちは草原に来た。
見晴らしも良いし、どうやら誰もいない。


「……広い…」

「ここなら修行ができるなー広いし。」

「・・・・・ガゼル。」

「なんだ。」


アルがガゼルの隣に移動し耳元で呟く。


「気配がない、動物も、植物の息も、人の鼓動も・・・・・」

「・・・・・あぁ。」


アルには不思議な能力があった。


人の気配を察知する。
いや、人だけでなく動植物、魂が宿っているもの全ての気配を察知する。

"犬"の破片の持ち主。

破片とはその名の通り欠片で、"犬"と言うのは人の気持ちを察知することがある。
そして、匂い・音・気配にも気づき優秀な生き物だ。

この犬の破片とは生まれながら13人の子供しか持たない能力だ。


犬はアル。
龍と肩を並べる強い動物"虎"の破片を持つ者は―――


「・・・本能も何も言わねえな。
 久々に黙ってやがる、あの虎やろう。」


ガゼル本人だ。

本能は虎と竜、馬に宿る意志を持つ欠片のことだ。
そしてもう一つは―――


"神に認められなかった猫"







「っで、音がないってことはどういうことだ。
 てめえなら大体分かるだろ。」

「まあねぇ・・・これは・・・」


ちらりとアルはソフィアに剣を渡しているナイトメアを見た。
何も無かったようにへらへら笑うナイトメア。


「あいつが作り出した結界だろうね。」

「結界・・・か。
 どうやったら抜け出せるんだ?」


結界を抜け出すには
唯一繋がっている現実世界のカギを探す事だ。

そしてそれを誰か一人触れれば結界は壊れる。


「うーん・・・・・アレかな?」


そういうとアルはナイトメアを指差す。
眉間にしわを寄せるガゼル。


「てめえ・・・なに腐抜けたこと言ってやがんだ・・・。」

「うわっ、ほ、本当だって!!
 ほら見ろ!!」


ぐいっとアルがガゼルをナイトメアの方に向かせる。
そして手をぎゅっと握った。

ガゼルには今まで見えなかったゆがんだ世界が見える。


「・・・・・。」


能力の共有。
これを能力者達は"パス"という。

そしてナイトメアの首元の鎖だけゆがまないで見えた。


「!・・・あの野郎。」

「うん・・・多分そうだよ。


 俺達抜け出せるかわかんないね。」


そうアルは呟いた。
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