トランプの世界

□五話
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ソフィアの剣により仮面は割れた。
そして猫は顔を両手で覆う。


「くぅっ・・・・・!」


「っ・・・。」


ソフィアはごくりと生唾を飲む。

その光景にガゼルは呆然としていた。


「どうなってるんだ・・・これは・・・」

「簡単なことさ。」

「?どういうことだ。」


睨みつけて言うと寅は苦笑いする。


「彼女にはひと押し必要だったんだよ。
 誰でもよかったんだ。

 お前でもな。」

「……あっそ。」


そう言ってガゼルは溜息をついた。
そしてまた前を見る。


「く、そ・・・くそくそくそくそくそっ!!」

「ねえ、猫さん。
 あなた・・・・・。」


猫が両手をどけてソフィアをみた。
それにソフィアは眼を丸くした。

その理由はただ一つ。


「えぇえええぇええぇぇぇええ!!?
 ア、アタシがもう一人いる――――!?」

「うるせえ!!」

「きゃあ!
 ガゼルが二人もいるうぅうぅううう!!」

「うるせえっつってんだろーが!!」


ガゼルのどなり声は止まない。


「どうして・・・ア、アタシが・・・」

「僕は・・・君のレプリカみたいなものなんだ。

 云わばクローンさ。」

「クローン・・・?」

「もう一人の君・・・みたいなものだよ。
 僕たちのことをそっちの世界では本能と呼んでいるらしいけど…

 本当の名前は・・・"神の言霊"って名前なんだ。」

「神の・・・言霊?」


ソフィアは首をかしげる。


「にしてもびっくりだ!
 こんな女の子に僕が負けるなんて・・・本当に情けないわ!」

「うっ・・・」

「まあな。」

「ガゼル・・・」


最後の最後にガゼルに言われソフィアはがくりとする。


「仕方がない。
 僕は君に負けた。だから・・・君の好きなように扱えばいい。」

「好きなように・・・って?」

「僕は君を傷つけた。
 君の仲間をわざわざ引っ張り出してね。

 酷い奴だから消していいんだよ。」

「そんなのダメだよ!!」


ガシッとソフィアは猫の手を握った。
それに全員が目を丸くする。


「ダメ!!そんなのダメ!!
 消すって死んじゃうってことでしょ!?

 そんなの嫌だよ!
 痛いよ、苦しいよ、死ぬ時きっと!!」

「僕の場合痛みは感じない。」

「でも、ダメなの!!」

「どうして?」


猫が不思議そうにソフィアを見た。


「なんでこんなひどい奴を君は・・・殺そうとしないの?」

「……?」

「恨まないの?
 どうして手を差し出す?

 僕にはその理由がわからない。」


猫の言葉にソフィアは悩む。
そして呟いた。


「友達だから!!」
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