トランプの世界
□八話
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俺は親父が結構好きだ。
親父には自分の目指す目標がちゃんとあって
なんでも無理だと思う物はあきらめないでやる親父の背中が好きだった。
それに比べて俺はどうだろうか?
俺は多分そんな親父には全然似てないだろうな。
目標もない。
できない、無理が俺の口癖。
親父みたいにでかいことを背負うことなんかできない。
しかも、俺は今だって親父が言ってることをやってるだけだ。
レールから離れる気はあるが、方法がわかんないって言ったとこか?
それか、もうこの道が楽だとわかってるからそのままにしているのか。
まぁ、どうでもいいや。
今は狩りに集中しなければ。
俺は親父とともに深い森に来た。
ここは危険度の高い森だ。
何が出るかもわかんない。
そんな森に親父が連れてきたのはそろそろ俺に後を継がせるためだろう。
この仕事は全体的に危ない。
どこで命を落とすかもわからない。
だから正直この仕事はやりたくなかった。
「俺は平凡に生きて、可愛らしいお嫁さんもらってー
妹にいい男見つけてやって老後老人ホーム入る予定だったんだけどー。」
「まぁ、そういうなって。
こういうスリルのある生活も良いぞー♪」
「よくねーよ、こえーよ。」
肩手に銃を持って親父は前を歩いていた。
親父の煙草の匂いが嫌いだ。
すぐむせるし眼痛いし。
でも、これは熊避けらしい。
だから熊に会わないのはラッキーなんだが…
「この森って一番危険なのって何に会うんだよ」
「ティラノだよ。」
「え・・・・・?」
ティラノって…
「親父何言ってんだよ。
恐竜はもう大昔に絶滅して…」
「しっ、しゃがんで前こい。」
そう言われ俺はすぐさましゃがんで親父の隣まで移動した。
そしてそこにいたのは―――
「なっ…嘘だ…」
親父の言うとおりティラノサウルスだった。
「行くぞ…」
「え、ちょ、親父!!」
親父は先に移動して発砲した。
ティラノサウルスにはあまりきいてないらしい。
なんで絶滅した恐竜が?
ありえないだろ、ここはどっかのRPGか?
そんなこと思いながら見ているとふと違和感を感じた。
何か…ぼやけたような。
「・・・・・まさか…!」
そのまさかのようだ。
ティラノサウルスの当たっているはずの銃弾は後ろに通り過ぎていく。
貫通している訳ではない。
血が出ていない、血のにおいもしない。
それなら可能性は一つ。
「親父!違う!!
そいつは幻術だ!!」
「なにっ!?」
俺が叫ぶと後ろから音がした。
背筋がゾクッとする。
「勘の良いガキは嫌いだよ。」
そう声が聞こえたと同時に後ろを振り向くと
シャッ
「うあっ!!」
「ガゼル!!」
右目を斬られた。