目で追う物語

□二話
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ナイフについた血を払い落とす。
そして先程の男の姿ではなく自分の姿へと戻った。


「・・・任務完了。」


そう告げるとアタシはカノのもとへと足を進めた。


「あれ?早いね。
 もう終わったの??」

「あぁ、簡単だった。」

「そっかー」


カノは糸も変わらず笑顔のままだった。
欺いているのだろうが。


「帰ろう。
 直警察も来る。」

「はーい。」


そう言ってアタシたちは一度アジトに戻った。


時間はどれほどたったであろうか?
二時間?
いや、目的地までつくのに時間がかかったからもっと長いだろう。


昼に彼らに再会し、もう日が暮れかけていた。


「大丈夫?」


カノの声が聞こえた。
笑顔のままだが、心配そうな声音だった。

その声にアタシは優しく微笑む。


「大丈夫だよ。」


なんどもみんなに見せた。嘘の笑顔。
なんどもみんなに言った。嘘の気持ち。

それを全てアタシの中で押し詰めて破壊していく。

粉々に、消えうせるまで。


「・・・・・そう。」


間をおいてカノはまた前を向いた。
そしてアジトのドアを開ける。


「ただいまー!」

「帰宅なー」

「おかえり。」

「おかえりなさーい!」


モモちゃんとキドがかえしてくれた。
他のメンツはどうしたのだろうか?

部屋を見渡せばコノハはソファで寝ていた。
その他は部屋だろう。


「はいキド。」

「ん。」


アタシが革のバッグを渡す。
中身はもちろん、金しかないだろう。
あと少々、内密な資料とか?


「先シャワー浴びるわ。」

「ああ、わかった。」


キドが包丁で野菜を切る規則正しい音が響く。
帰ってきたのだと再確認した。

わいてくる温かい何かを心にしまいこんで
ふとアタシは笑った。
そして自分の部屋に入って写真を持ち上げる。


「ただいま。」


そう告げるとアタシは写真を棚にしまった。
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