目で追う物語

□六話
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「合計で4578円です。」


うっ・・・予算めっちゃオーバー・・・。


「えっと・・・このマグカップは別で会計お願いします。」

「はい、わかりました。
 プレゼントですか??」

「あ・・・」


ちらりとマリーを見るとうずうずとしていた。
どうやらプレゼントとして渡したいらしい。


「あの、この茶色の大きい犬のだけお願いします。」

「はい、わかりました。」


テキパキと箱に詰める店員。
こそりとアタシはマリーに言う。


「好きな人にちゃーんと想いを込めて渡すんだよ?」


ぼっと顔を真っ赤にするマリー。
ケラケラと笑っているとマリーがアタシをぽかぽかと殴る。


「はい、どうぞ。」

「あ・・・ありがとう・・・」


マリーに店員が箱に入れた方のマグカップを渡す。


「頑張ってね」


とマリーにウインクをする。
それにさっきよりも顔を真っ赤にするマリー。

コクコクと勢い良くうなずく。

可愛いなあ・・・。
本日何度目だろう。


「じゃあ、行こうかマリー。
 早く渡そっ!」

「うん!!」


そう言ってアタシ達はバス停に向かう。

正直あまり乗り気じゃなかったが仕方ない。
言わば引きこもり化してるマリーの体力は限界だ。

だからと言っておんぶだと、マリーが寝ちゃってマグカップ落として割るかもしれない。

小声で大丈夫大丈夫と呪文のようにマリーが呟く。
アタシは苦笑いしかできなかった。


まわりにはちょうど昼の時間のせいか客はいなかった。
デパート前なのだからデパートで済ませる人が多いのであろう。


「行こう、マリー。」


そう言ってアタシ達はバスに乗る。
冷房が利いていて涼しい。

マリーもふーと息を吐く。

落とさないように落とさないようにとマリーが大事にマグカップを持つ。
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