トランプの世界

□六話
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乾いた音の原因はソフィアの平手打ちだった。
綺麗にキラツネの頬を叩いた。

それに全員が呆然とする。
ナイトメアはというと具現化していた影の壁がボロボロと堕ちて行くほど呆然としていた。

キラツネはただただ頬を押さえていた。


「・・・・・って」

「は?」


キラツネが聞き返すとソフィアがキラツネの胸元をつかんで顔に引きつけた。


「アルに謝って!!
 さっきの言葉取り消しなさいよ!!」

「っ!」


その言葉にアルは眼を丸くした。


「は、はあ・・・?
 なんで?なにを謝ればいのさ?」

「お前が言った全部だ!!」


そう言うソフィアの眼は怒りに満ちていた。
それに全員が驚く。


「アルは無力じゃない!弱虫でもない!!
 裏切り者なんかじゃない!

 アルは弱いアタシを護ってくれた!弱いアタシを助けてくれたんだ!
 何度も何度も辛いときだってアルは笑ってくれた!
 それだけでアタシは助けられたんだ!!

 だから・・・アタシの大事な・・・大事な仲間を侮辱するなっ!!」

「ソフィア・・・」


ソフィアの言葉にアルは瞼が熱くなった。

そんな中、キラツネはまた笑う。


「ふざけるなよ。
 なんで私が謝るの?必要ないじゃないか。

 僕は間違ったことはしてない。」

「お前っ・・・!」


そう言ってまた平手をくらわせようとした時腕を掴まれた。
それに振りかえるとアルがいた。


「アル・・・・・?」

「もう、いい…ソフィア。」


そう弱弱しくアルは笑った。
それをみて泣きそうになったがソフィアは涙をこらえて
拳を作り一発思いっ切りキラツネを殴った。

その反動でキラツネは気を失ったらしい。


「お前が・・・俺のためにそんな手を汚さなくていいんだよ。」

「……。」

「ありがとな、ソフィア。」


そう言ってアルはぽんぽんとソフィアの頭をなでた。
それに今まで我慢していた涙が溢れだし、アルに抱きついた。


「うっ・・・くぅっ・・・ふっ・・・」

「ごめんな、ありがとう。」

「う…アルの馬鹿あぁぁぁあぁあ」


そう言ってソフィアは泣きだす。


「全く・・・泣き虫なんだから・・・ねえガゼルちゃーん?」

「うるせえ、黙れ。
 おい、泣き虫。」


そうガゼルが言うとソフィアは反応してジロッとガゼルを睨んだ。


「泣き虫じゃないもん!!」

「今もろボロボロ泣いてんだろーが。」

「泣いてないもん!!」

「うるせえ、あぶねえからここ離れるぞ。
 アル、行けるだろ?」

「!お、おう」


アルはそう反応すると歩き出す。


「む、無理しないでね!
 痛かったら言ってね!アタシ何でもするから!!」

「大丈夫。」

「つか、お前だったらなんもできねーだろ、チビ」

「チビって…!」


そう言ってガゼルとソフィアの口げんかが始まった。
しかしアルとナイトメアは気付いていた。

ガゼルがそんな喧嘩の中楽しそうに、懐かしそうにソフィアを見ていたことを。
誰かと重ねているように見ているのを―――。
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