トランプの世界

□六話
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「アイツ・・・とどめ刺さなくて良かったのか?」


そのガゼルの言葉にソフィアはにこっと笑う。


「大丈夫だよ。
 猫の能力は無効化だけじゃないの。
 能力を神様に還す事も出来るんだよ。」

「へえ・・・すげえなあ。」


アルがそう言うとソフィアは眼を輝かせた。


(あ、子犬みたい。)


もっと褒めてという顔をするソフィアにアルは笑った。
ガゼルは溜息をつく。


「で、これからどうする。」

「どうするって…進むんでしょ?」

「お前に聞いてねえチビ。
 ナイトメアだ。」

「え、俺?」


ソフィアがガゼルに噛みつこうとするのをアルは何とか止めていた。
そして影からナイトメアが姿を現す。


「んーとりあえず、もう副隊長さんが出てきたってことは次は隊長らへんだろうね。
 隊長なら隊を引き連れてそうだし・・・狭いとこは止めとこう。
 街とかは避けた方がいいと思うから普通にそこらへん彷徨ってていいと思うよ。」

「彷徨ってって…」


ソフィアが苦笑いする。
ナイトメアの言葉にガゼルは一度うなずくとその場に座った。


「疲れたの?」

「今日はここまでだ。」

「は?」


ガゼルがそう言うとアルを見た。


「まずはてめえのことを片っ端から教えてもらうぜ、アル。」

「・・・わかった。」


短くそうアルは答えた。











俺は元はハートの国の貧乏な住民だった。
母親は俺を産んでから死んだらしく、父親は人生のイライラを全て俺にぶつけるため
俺はその家から逃げ出してホームレスみたいな生活をしていた。

そんないつものようにぼーっと生活していた時だった。


「ちょっと!離しなさいよ!
 やめてっ!!」


そんな少女の声が聞こえた。

その声に俺は路地裏から顔を出すと、10歳くらいの少女がいた。
男二人が前にいて、眼鏡をかけた男が少女の腕をつかんでいた。


「いいじゃんかよ。
 ほら、おかしあげるからおいでー」

「そんなんで今のガキは来るかよバーカ。」


そう言って男達は笑う。
少女はキッと男達を睨む。


「馬鹿にしないで!!
 その手を離しなさい!」

「ああ?」


そう怒鳴ると男はじろりと少女を睨みつけた。
それに少女はビクリとした。

俺がいた場所だから見えたのだろう。

強がっている少女はずっとずっと震えていた。
誰にも弱いとこを見せないように。

男の手が上に上がる。


「ギャーギャーうるせえな。」

「っ!!」


きゅっと少女が眼を閉じた。

男の手が振り下ろされてる最中―――俺の身体は反射的に動いた。


バシャッ!!


「ぶっ!?」

「うわっ!」
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