トランプの世界

□六話
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俺は近くにあった雨水溜めのバケツに入っていた水を男達目掛けてぶっかけた。
少女はいきなりのことに眼を丸くしていた。


「女の子に手え出すってどんな根性してんの、おじさんたち。」

「あんだと?」

「この、くそガキ!!」


そう言って眼鏡の男が俺に拳をぶつけようとした。
それを俺はさっとかわす。

親父の虐待からこういう反射神経とかは他の奴らよりは成長している。


「んのやろ!」

「おわっと!」


そう言って俺は掴みにかかろうとしたもう一人の男の背中に跳んで
持っていたバケツを男にかぶせた。

俺に拳をあてれなかった男が顔を横に振って立ちあがった時
俺がバケツのかぶっている男を蹴って二人とも転ばせる。

その拍子でバケツが取れた。

大通りで子供一人にやられる大人二人。
だせえ。

そんなことを思っている間に男達は逃げて行った。


「軽い奴等・・・」

「あ、あの。」


そう言って俺は少女の方を見た。
ふくれっ面をしている。


「あ、あんなの私一人でも倒せましたわ!
 手助けなんて必要なかったのに!!」

「えーっと・・・」


こんな返し方初めてだ。
話し方でお嬢様だと言うことを知る。

まぁ、そんな身分はどうでもいいや。


「まぁ、見てられなくってさ・・・ケガとかない?」

「―――っ!!」


そう言って手を前に出すと思いっ切りはたかれた。
痛い。


「え、えぇっと・・・あの・・・?」

「ば、馬鹿じゃないの!?
 なんで自分が怪我するかもしれなかったのに私の心配をしているのです!?
 信じられませんわ!!」

「いや…だって。
 女の子にケガさせちゃったら大変だよ。
 俺みたいな男は強いから良いけど。」

「私だって強い「でも。」っ!」


俺が少女の手を取ってニコリと笑った。


「ケガがなくて良かったよ。」


それが始まりだったのかもしれない。












「・・・・・てーのが初めての出会い。」

「・・・・・天然たらし。」

「えぇ!?ど、どーいうことだよ!!」

「ねえ、ナイトメア。
 たらしってなに?」

「知らなくていいよ、ソフィアはー」


コホンと一つ咳払いをしてアルは話を戻す。












少女を助けてからよく俺のとこに遊びに来ていた。
そしてそれから二週間がたった時だ。


「アル!私の騎士になりなさい!!」


いきなりの命令だった。
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