トランプの世界

□七話
2ページ/5ページ

「はぁ…。」


俺は大きなため息をついた。
その理由は一つ。

俺が王女直属に入ってからのいやがらせが半端なかったのだ。

朝王宮に入った途端水ぶっかけられたり、靴なかったり
妙にみんなにさけられたり・・・

最後には・・・


ガキンッ


「・・・・・ふぅ。」


武器が飛んでくるほどだ。
俺が何をしたって言うんだ・・・。

まぁ、理由は簡単だろう。

アカデミーにも入らずに即王女直属幹部の仲間入りだ。
しかも限定2名の。

真面目にやってるやつらには何か王女にやらかしたとしか思えないだろう。


「はあ・・・・・」

「どうしたの?そんな大きなため息をついて」

「うわぁああぁぁあ!?」


いきなり声をかけられ横を見ると姫がいた。
それに驚いて俺は背中を手摺に強打して8階のベランダから落ちそうになった。

もちろん姫が腕を引っ張ってくれたが。


「あ、ありがとう・・・ございます・・・」

「あ、貴方本当にどうしたのよ…」


溜息をつきながら言われた。
それに俺は苦笑いして言う。


「なんでもないです。」


と。
俺の苦しみは俺だけが受けていればいい。
だれも知らなくていいんだ。

我慢してれば・・・なんとかなるだろう。


「なんでもなくないわよ、このバカ犬。」


そういって姫は俺の頭を殴った。
痛いです。非常に痛いです。


「あんたのなんでもないはいっつも何かあるじゃないの。
 それに・・・」


そう言って姫は俺の足元を見た。
眼に入るのはボロボロに切り裂かれているブーツだ。


「これで、何もないと言うの?」

「はい!」

「……。」


今度はハリセンでたたかれた。
どこから出てきたの、そのハリセン。


「アンタねえ・・・・・!」

「ほ、本当に大丈夫ですから!!
 俺何ともないです!!」


そう言って逃れようとするともう一発ハリセン。
なんなのもう・・・・・俺泣きたい。


「アタシはアンタが大切なの!
 大切なんだから心配させなさいよ!!

 アンタはアタシの犬!アタシは飼い主!!
 少しは甘えなさい、バカアホマヌケ犬!!」

「え、えぇ!?」


ランクアップした。

でも・・・いいのか?
彼女はこの国の王女。そんな彼女に俺は甘えていいのか?

そんなこと思っている間に俺の眼には涙がたまっていた。
そしてポロポロと流れていく。

そんな俺を彼女はそっと頭をなでてくれた。
そしてずっと泣きやむまで俺の隣にいてくれた。


初めて、人に甘えることが許された日だった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ