トランプの世界
□十話
2ページ/5ページ
時間が止まった気がした。
赤い液体が目にしっかりと焼き付いて
目の前の恨む人は俺をじっと見て
手には・・・肉を斬り裂いた感触が残っている。
「あ・・・。」
「アル!!」
ソフィアがアルの名を叫ぶ。
アルは切り裂かれた額の血が目に入らないように
片目だけを閉じアラフォードを見つめていた。
まっすぐと、なにかを訴えかけるように。
「・・・・・っ!」
「アラフォード。」
アラフォードの真面目で焦る顔に決闘と言われた日を思い出した。
そのときも最初の攻撃を受けた時、同じ顔をしていたのだ。
ふと笑いがこみあげてくる。
(今どんな顔をしているのだろう?)
(痛みに顔が引きつっているのかな?)
(あぁ、でも・・・
笑って、いたいなあ・・・)
へらっと前と同じようにアルは笑った。
「ごめんな、置いてって。」
「っ!!」
アラフォードが目を丸くする。
「でも、な、アラフォード・・・」
くらくらする
「俺、本当は・・・」
お願いだよ、最後まで・・・言わせてくれ。
「本当に馬鹿だよね、君は。」
懐かしい声を耳にして俺は意識を手放した。