短編

□愛しき人へ。
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そっと先輩たちといる部屋から外を覗き込むと
そこには人だかりが出来ていた。

ふと真ん中にいた人物が俺に気づき手を振る。


「シカマルー!」

「よぉ、ナツキ。
 これから任務か?」

「んー!頑張ってくるネー!」


ガッツポーズを見せる俺の彼女―ナツキに手を振る。


「おやおやラブラブで。
 あっついねー」

「あ」

「カカシさん。」


ドアの方から声が聞こえ振り向けばカカシ先生。
会釈してからチラリと人だかりを見れば笑顔を見せるナツキが見える。


「ほんとあの子は太陽みたいダネ。
 ぽかぽかと温かい光ってとこかな。」

「・・・・・そうっすかね。」

「ん?」


俺は知ってる。


誰よりも責任感が強く、傷つきやすいアイツを。
でも誰にも弱いところを見せたくなくて、涙なんかこぼしたくなくて
必死に耐えて作った笑顔を貼り付けて
心に空間を作ってるあいつを。



『お願い…戻ってきてよォ…!』



悲痛の叫びを上げるナツキの姿がふと浮かび上がって
ちらりとカカシ先生を見た。
カカシ先生は首をかしげる。


(アンタが…一度死んだ時にアイツが初めて人の前で泣いたんだよ)


なんて言えず。

ただ、ずっとずっと一緒で
大切な仲間でそんな仲間を二人なくすなんてアイツは
苦しくて悲しくて耐えられなかったのだろう。

ふと視線を動かせばもう人だかりはなくて
ナツキの姿もなかった。


「アイツは…ただの天邪鬼っすよ。」

「天邪鬼、ねえ…」


うーん、と唸るカカシ先生。


「ガラスのハートってやつダネ。」

「は?」

「ナツキの胸の中ってそんな感じかなーって。
 で、たまに割れて角を立てて誰かを傷つけちゃうの。」

「・・・・・。」


眉間にしわが寄るのがわかる。
それを見てかカカシ先生はふと笑った。


「だから、お前なんだな。」

「――え?」

「じゃあ、報告書だしてくるね〜
 また今度―。」

「あ、おい!」


手を伸ばすが時はもう遅くてカカシ先生はいなくなっていた。
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