短編

□愛しき人へ。
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任務に出てから2週間。
今日はどしゃぶりだった。


「あと10分もすれば里につくそうだ。」


火影様の言葉を聞いて俺は傘をさして里の入口で待機する。
ギィと音を立てながら開いて大きなため息をつくナツキ。
雨でびしょ濡れのナツキが俺に気づくと飛びついてきた。


「ただいまーシカマルっ!」

「ん、おかえり。」


幸せそうに笑うナツキの頭を撫でてやれば照れくさそうに笑う。

そのまま肩を寄せ合いながら相合傘をして火影室の方へと向かった。
ゆっくりとふたりの時間を楽しみながら。


「長かったな。」

「うん、ちょっとねー
 手こずっちゃって」


その言葉にピタリと止まる。
ナツキが自分の名前を呼ぶが何も答えられなかった。



…こんな雨の日だからだ。
だからこんなにも不安になるんだ。

ふと脳裏には俺の前から姿を消した先生―アスマが映る。
アスマがいなくなって、復讐した日もこんな雨だったっけか。

突然目の前で消えて、幸せが崩れないか不安になって―


「シカマルっ!」

「!」


ぎゅうっとナツキが俺を抱きしめる。
驚いて傘から手を離してしまい、傘は落ちた。


「…ナツキ…?」

「ねえ、シカマル…
 今シカマルは」





“幸せ?”





その問いに俺は硬直する。
心配そうなナツキの顔。
それから苦笑いするナツキ。


「私は幸せだよ?
 大好きな人が…シカマルが傍にいて…こうやって暖かさを感じられて…
 すっごくすっごく幸せだよ」

「ナツキ…。」

「シカマルは…幸せ?」


震えるナツキの身体、腕、手。
それでも感じるナツキの暖かい体温と心の暖かさ。


「ったく、めんどくせーな。
 …俺も幸せに決まってんだろ。」

「!…うん!」


そう言って二人で手をつなぎ相合傘を再開。
無駄に照れくさかったのはお互い様だろう。
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