短編

□お泊り
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「キーバー?」

「ん?」


赤丸の頭に手を乗せたまま振り向く私の彼氏―キバ。
その無邪気な顔に未だにきゅんとする。


「キバ今日暇?」

「今日かー今日・・・・・あ。」

「なんかあったりしますか…?」


キバの反応に不安になり顔を覗きこむ。
赤丸の頭から手をおろしてじーっと赤丸を見ていた。

赤丸ずるい。


「赤丸を連れて家族全員でどっか行くっつってたっけかな。
 俺聞かされてなくて準備もしてないから置いてかれるけど。」

「じゃあ、暇なの?」

「おう。」

「じゃ、じゃあ家に来ない?」


私の言葉に目を丸くするキバ。
それから辺りを見渡して考え込むポーズをした。


「どうしたの?」

「これ…良い夢だな。」

「夢じゃないです現実です。」

「・・・・・まじ?」

「まじ。」


お互いに黙って見つめ合う。
ドキドキしつつも顔に出ないようにキバを見ていると珍しくキバが視線をそらした。


(あーもう…そんなに見るなよ…)


「飯ある?」

「作る。」

「ナツキの手作り?」

「うん。」

「っ絶対行く!!」

「きゃっ!?」


手を掴まれて驚くとキバの笑顔が目に入る。
あぁもう…


「かっこいいな…」

「ん?」

「ナンデモナイデス。」


ポツリと呟けば聞こえてないようで安心した。
そのあと何度も呟いた言葉を聞かれたが全て避けて家に帰った。
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