ストゆり

□愛は甘辛に
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 結局、ペリーヌはどのクラブにも入らなかった。入らなかったという言葉は少し違うかもしれない。エイラの占いクラブには一応入っていることになっている。サーニャも入った。
「ペリーヌさん、音楽室に行きましょう」
授業が終わり隣の席のサーニャが声をかけた。
「そうですわね、行きましょうサーニャさん」
 クラブに入らなくても別に成績には影響しない。もちろん大会があるようなクラブは進学をしたりする時には優遇される。サーニャのように音楽をやる人はクラブも音楽をやっていると何かと便利なのである。
「サーニャさんは将来、音楽をやりますの?」
「はい昔からやっていたからやりたいです」
「それでは何故、こんなクラブに……」
 クラブがなければ作るということもできる。他にも学校ではなく音楽教室を営んでいるところで勉強すればいい。それなのに一体何をするかも決まっていないクラブに入ったことが気になっていた。
「もちろん音楽の勉強はしたいです。でも私むかしから引っ込み思案で中々人と話すことができなくて、少しでもそんな自分を変えられたらって、それに……」
「それに?」
「バルクホルンさんがいますから」
 きっとこっちが本音に違いないとペリーヌは思った。引っ込み思案ならエイラにはっきりと仲良くなれる気がしないなんて言えない。
「まあ、サーニャさんのやり方がありますものね」
 返答に困ったペリーヌはそう言った。
「ペリーヌさんは、なんでこのクラブに入ろうと思ったの?」
 そう聞かれてペリーヌはどうしてだろうと思った。入学した当時はどのクラブに入るか楽しみにしていたのに、結局エイラに強引に入部させられたクラブにずっといる。
「わたくしも同じかしら」
「ペリーヌさんも、バルクホルンさんを」
「いえ違います」
「ああ、引っ込み思案の方ですか?」
「ええ……」
 いつもはおとなしいサーニャ。そのためエイラのようにボケているのか分からなくツッコミしにくい。
「わたくし、学校を卒業したら地元で仕事をしようと思いまして」
「お役所ですか?」
「ええ、地元のために何かしたいと思いまして」
「いいですね、地元愛があって」
「小さい町ですけどね」
「それでもいいと思います」
ペリーヌとサーニャは音楽室の前まで来て扉を開いた。
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