夢小説

□シーリングファン
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吾輩はファンである。名前はまだない。
近年エアコンが普及してきて、 吾輩の出番は急激に減っている。実に嘆かわしいことである。


そんな中、とあるカフェの天井に吾輩は取り付けられた。
本来の役目を果たせるのか、或いはインテリアとして生涯を迎えるのかはまだわからない。

どちらにせよ、吾輩はただ回り続けることしか出来ない。自分で動けないこのもどかしさをどうにかしたいものである。



今日も吾輩はいつも通りくるくると回り続ける。変わったことと言えば、新しいバイトが入ったことだろうか。
栗色の毛からたびたび覗く傷が印象的であった。


しばらくして、我輩は彼の名前を知ることになる。不二裕太というらしい。今まではただのバイトとしてしか見ていなかったが、毎回彼の働きを見ているうちに何故だか彼のことが妙に気になり始めた。
他の人間となんら変わらないはずなのに、彼ばかりを追ってしまう。


いつしか我輩は彼にもっと風が届けばいいのに、と変わらない回転数をあげようと必死になっていた。



 
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