死にたがり

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突然の出会い、そして突然の告白。

彼女にとっては忙しい一日だっただろう。



余命を告げられたが、友達ができたことによって
少しは気持ちが穏やかになっただろうか。



まあ、これも僕の計算のうちなのだけれど。




僕は死神だ。


どこかの漫画で聞いたことがあるかもしれないが、
死神は自分の死期が近づくと人間の残りの寿命をもらい、命を繋げる。


これを何千、何万年と続けていくのだ。


ああ、もちろん人間に対して悲しみだとかの情は一切ない。



しいて言うならお礼を言うべきなのだろうか?


いや、それはこちらのセリフだな。


僕に”選ばれた”のだからありがたく思ってもらわないとね。



人間の寿命は1年で、死神にとっては10年の価値がある。


おかしいだろう?

僕たちよりも醜く、弱く、下等な生き物なのに。


それだけが僕には理解できないのだ。



そして、人間の寿命をもらわずにいると
死神は灰になってしまうのだ。



跡形も残らずに消滅する。



僕はそれについて恐怖はない。



存在しているだけで、ただ退屈だからだ。


寿命が近づけば適当に決められた人間の寿命をいただけばいい。


ただ、暇つぶしにしているだけだ。


だから僕はこの世界が、とても退屈で。



ずっと考えていたら気付いたんだ。



ただ殺すのではなく、じわじわと苦しめて殺してあげようと決めたのだ。



そして死神が人間の寿命を奪うとき、
人間の唇から奪うため、
必然的に口付けなければならない。



それだけがどうしても受け入れられない。



あんな下等生物と接吻だなんてね。




一瞬でも嫌なものは嫌だ。


だが、とうとうこの時が来てしまったのだ。





僕は決めた。




この少女を信用させて、最後に裏切ってやろうと。



不幸のどん底に落としてやろうと。



でもね。意識がなくなるのはすぐだから
そんなに苦しまないんだよ



ただ一瞬の心の痛みが大きいだけで、ね。





真っ赤に染まる空を見上げた。




ああ、楽しみだなあ。






700年に一度の大イベント。





さあ、苦しんで逝ってよ。





















    
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