死にたがり

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「あ、もうこんな時間・・・。」



時間というものは本当に早く過ぎていくもので、
時計を見ると7時半を指していた。


この病院は、面会時間というものがあって、
8時には追い出されてしまうようだった。



「征十郎君、そろそろ帰らないと・・・」



「ああ、そのようだね。

また来るよ。おやすみ。」



椅子から立ち、その場から去ろうとすると
服の袖を掴まれた。



「・・・どうしたんだ?」




「・・・・あと少しだけ傍に居てほしいな・・なんて。」



俯いたまま小声で呟く。



そういえばさっき夜は嫌いだとかなんとか言っていたかな。



「いいよ、さあ、横になって。」



背中に手を置いてゆっくりと寝かせる。


人間はこんなに軽い生き物だっただろうか。



横になると心なしか落ち着いたように見えた。



僕は雪菜の左手を握りしめた


「今日は疲れたね、ちゃんと寝るんだよ?」


そういってゆっくりと頭を撫でる



「・・・うん。いつも・・・ありがとね。」



雪菜は微笑みながら目を閉じていく。



何回かゆっくりと瞬きをしたかと思うと
整った息遣いが聞こえてきた。



どうやら眠ったようだ。




「・・・・・おやすみ。」



勝手に言葉が出てきてしまった。


人間相手に何をしているんだ僕は・・・



別に同情なんてしていないし、
ただ様子を見ているだけなのに、



いつの間にか自分と近くの存在のようになりつつあった。



早く、死んで欲しいけれど、なんだか違う。





モヤモヤとしたまま雪菜の寝顔を見て部屋を後にする。


雪菜の前以外では不要なので、
雪菜以外の人間からは見えないようにする。


静かな足音だけが廊下に響きわたる。



ある部屋を横切ったとき、
中からひそひそと話し声が聞こえた。



普段はそのようなものは気にかかるようなことはなかった。


しかし、今回の話されていた内容を聞いてしまった。





どうしようもなく、許せなかった。


















           
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