赤司

□君と星と終焉と
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結婚式を前日に控え、仕事を早く終わらせようとパソコンの前に座る。





「赤司っち!明日はとうとう結婚式っスね!

一日早いけど、おめでとうっス!

俺、明日はどうしてもいけないんで・・・」



「ああ、ありがとう、涼太。

また是非家に遊びに来てくれ。」



「はいっス!」




今声をかけてきたのは同僚の黄瀬涼太。



同い年で仲良くしている。



というより、この職場には偶然にも全員同じ年なのだ。




「おー、赤司ー。明日結婚式だろ?


これ、しょうもねえけど。」



そういって手渡されたのは二人の名前が入った写真立て。


「しょうもなくなどないよ、ありがとう。大輝」



「おー。名無子にもよろしくな。」



「ああ、名無子もきっと喜ぶよ。」



青峰にそう告げると頭をかいて照れているようだった。



「赤司君!!!」




「どうした?」



黒子が珍しく声を上げて部屋に入ってくる。




「・・・隕石が!!」



「隕石?大きさはどのくらいだ?」




「それが・・・・」




青峰と黄瀬も黒子について隣の部屋に駆け込む




「これは・・・・」





赤司は目を見開いた。





数日前にはこんな隕石はなかったはずだ。

なのにどうして・・・



「テツヤ、これはいつレーダーが感知したんだ?」



「それが・・・・」



「おい、これついさっきじゃねえか!!」



「ということは・・・」



黄瀬がパソコンに数字を打ち込み計算をする





「今日の夜・・・・っス。」




「うそ・・・だろ・・・」







何も考えられなかった。




ただ





頭に浮かんだのは





名無子の顔。







「あー。明日楽しみだったのになー。


なんにもできないんスね・・・ほんと。」




黄瀬が壁にもたれて小さく嘆く。




「赤司、お前もう帰れよ。」




「そうですよ。名無子さんが待っていますよ」





「・・・そうだな。」






そういって赤司は黄瀬に近付く


そしてどちらともなく抱き合った。


「・・・涼太。いままでありがとう。


来世でまた会おう。」




「・・・はいっス。


また会いたいっス・・・今度はちゃんと結婚式、いくっス」




「ああ。」




黄瀬から離れ、青峰の方に近付く


そしてまた抱き合う。




「・・・大輝。いままでありがとう。


写真立ては、帰ったらすぐに飾っておくよ。」



「ああ、そうしてくれねえと成仏できねえよ。」




「はは、そうか。じゃあ飾らないでおこうか?」



「おいおい、冗談はよしてくれよ。」



「冗談だよ、ちゃんと飾るさ。


この間みんなで撮った写真を。」




そういって離れる。


そして黒子の方に近付き、抱き合った。




「赤司君・・・」



「テツヤ、君と仕事ができてよかったよ。

君は最後に入ってきたけど、思った以上に仕事ができるヤツだった。

今までありがとう。」



すると黒子の目からは涙が溢れだした




「・・っく・・・嫌です・・・こんなの・・・っ・・・」



「また会えるから。



そうだろ?二人とも?」





「そうっスよ!黒子っち!!」




「何泣いてんだよテツ。


後でマジバ行こうぜ。」




こんな時なのに笑えるなんて。


もうわかっているのだろう


泣いたって笑ったって


この現状は、運命は変わらないのだと。




「そう・・・ですね。


青峰君、今日はシェイク死ぬほど飲みますから。」




「おう、いいぜ。」





黒子の頭に手を置く。




「それじゃあ・・・またな。」




「おう、じゃあな、」



「また来世・・・っス」



「ではまた。」





黒子と黄瀬と青峰と別れ、


赤司は廊下を走る





会いたい




早く




一秒でも長く




名無子に会いたい・・・!!!








車に乗り込み、エンジンをかける。



そしてそのまま一気にアクセルを踏み、帰路につく





「あ、征ちゃんおかえり。」




ドアを開けると僕の名無子が出迎えてくれる。




「今日は早いね、何かあったの?」



「いや、早く終わったからね。

それに明日は結婚式があるだろう?」



「ふふ、そうだったね。」




ふわりと花のように笑う君は



今日世界が終わるなんて微塵にも思っていないんだろう。






泣いてはだめだ。













    
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